研究実績の概要 |
アルツハイマー病などの神経変性疾患では、内因性変性タンパク質が凝集し神経細胞を傷害する。内因性変性タンパク質は20Sプロテアソームにより分解されるが、20Sプロテアソームではタンパク質が内部の触媒部位へと侵入するゲートが閉じられている。そのため、細胞内に存在するタンパク質性活性化因子がゲートを開口し分解を誘導する。そこで本研究では、20Sプロテアソームのゲートの開口を促進することにより、20Sプロテアソームによる変性タンパク質の分解を亢進できる低分子性プロテアソーム活性化剤を天然資源から探索している。 初めに、20Sプロテアソームのキモトリプシン様(CT-L)活性部位により分解される蛍光基質を用いて、天然物及びその誘導体を含むPhytochemical Library (Prestwick社)をスクリーニングした。その結果、syrosingopineが最も強いCT-L活性を示した。そして、α-synucleinはパーキンソン病と関連する内因性変性タンパク質であるが、syrosingopineは20Sプロテアソームによるα-synucleinの分解を促進させた。さらに、細胞内のプロテアソーム活性を評価できる蛍光プローブを用いた実験により、syrosingopineが細胞内において20Sプロテアソームのゲートを開口させ活性化させることもわかった。本研究成果は、学会発表(第24回天然薬物の開発と応用シンポジウム)するとともに論文(J. Nat. Prod. 2024, 87, 554-559)で発表した。
|