研究課題/領域番号 |
21K19342
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
服部 光治 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (60272481)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 脳 / 脂肪酸 / リン脂質 / 細胞膜 / 酵素 |
研究実績の概要 |
神経細胞膜の脂質組成が他の細胞膜のそれと大きく異なることは良く知られているが、その差異が生じるメカニズム、および、生物学的意義の全貌はほぼ未解明である。疫学研究から、脳における多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids、PUFA)の減少が、うつ・統合失調症・記憶障害などの精神神経疾患の悪化要因であることが強く示唆されている。また、in vitroの実験からは、PUFAが神経細胞(特にシナプス)で重要な機能をもつことが示唆されている。しかし、個々のPUFA分子(またはそれを前駆体とするメディエイター)が個別に重要な意義をもつのか、または、生体膜における炭素数と二重結合数のバランス(≒膜流動性)が重要なのかは、今なお全く不明である。本研究では、神経細胞の機能を「膜流動性」という観点から見直すことでシナプスにおけるPUFAの機能を解明するとともに、新規の疾患治療法開発へとつなげることを目指す。 マウス脳初代培養神経細胞を様々な条件で培養し、膜の流動性を反映する蛍光プローブNR12A(フランスの研究者および国内他大学より供与)を用いて流動性イメージングを行った結果。神経細胞の膜流動性は局所によって異なることを見いだした。特に、興奮性シナプス後部においては興味深い変化が見られたので、これがどのような脂質によってもたらせられているかについて、脂肪酸あるいは脂質の代謝酵素の阻害剤等の効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージングの結果や、脂質変動については一定の成果が得られつつある。特に、脳の構造形成と機能発現におけるリーリンという巨大分泌タンパク質の欠損マウス由来の神経細胞では野生型マウスとは異なる結果が得られており、その分子メカニズムを解明する突破口になると考えている。プロテオミクス的な解析についてはまだ条件検討の域を脱していないが、これは当初からの予定通りであり、2年目に集中的に行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、基礎科学的には「生体膜の流動性が細胞機能に与える一般的影響の解明」と「脂質を制御することで精神神経疾患を治療する」という二つの究極的目標を有する。しかし、これらについてメカニズムを含む全てを証明するには、技術的なブレークスルーも必要であり、2年という時間内では難しい。今後の発展的または基盤的研究につなげられるような基礎となるデータあるいはモデルを得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張参加を予定していた学会がオンライン開催となったため、旅費を使用しなかった。令和4年度は消耗品費の大幅な値上がりが予定されているため、その補填に回す。
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