研究課題/領域番号 |
21K19344
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西川 喜代孝 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40218128)
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研究分担者 |
和久 剛 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (40613584)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | SARS-CoV2 / 受容体結合 / ACE2 / ペプチドライブラリー / 細胞内輸送 |
研究実績の概要 |
1)SタンパクのRBD(S1-RBD)を標的としたペプチド性阻害薬の同定(西川・和久);バキュロウイルス発現系を用いてS1-RBDのC末端にHis-tagを導入したS1-RBD-(H6)、ならびにACE2との結合に重要な役割を果たしているアミノ酸(K417, F486, Q493)に個別に変異を導入した一連の変異体を作成した。各種変異体は、培養上性清をNi-ビーズに吸着、洗浄後、イミダゾールにて溶出を行うことにより回収した。さらに、ゲル濾過カラムPD-10によりバッファー交換を行い、回収タンパク質量を定量した。作成した各S1-RBDを用い、野生型ではACE2との十分な結合活性が観察されること、一方で変異体では結合活性が減弱していることを確認した。確認にあたっては、ACE2をELISAプレートに固相化し、各S1-RBDを添加後、結合したS1-RBDを抗His-tag抗体を用いて検出した。使用した変異S1-RBDの中でもK417A-S1-RBDで最も結合活性が減弱していること、すなわちK417がACE2との結合に最も重要な役割を果たしていることを見出した。そこで、野生型S1-RBDとK417A-S1-RBDを用い、多価型ランダムペプチドライブラリー法による高親和性モチーフの取得を行うこととした。多価型ランダムペプチドライブラリー(7箇所のランダムアミノ酸部位を含むペプチドを4本有する4価型ペプチドライブラリー)をセルロースシート上に合成したものを用い、野生型S1-RBDとK417A-S1-RBDでブロットし、抗His-tag抗体を用いて各スポットへの結合量を評価する。その結果、K417A-S1-RBDよりも野生型S1-RBDにより強く結合することを指標にスクリーンングを行うことにより、最適アミノ酸とそのpositionを同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、RBDとACE2との結合に最も重要な役割を果たしているアミノ酸K417を同定することができた。本成果は今後多価型ランダムペプチドライブラリーを用いた高親和性モチーフの同定にあたって極めて重要な知見を提供しており、今後精度の高いスクリーニングの推進に貢献することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)K417を標的としたS1-RBD高親和性ペプチドのスクリーニングを推進する。取得した一連のモチーフをライブラリーと同じ核構造に導入し、4価型ペプチドを合成する。この段階で数十のレベルでの候補取得を目指す。 2)抗ウイルスamphisomeを形成誘導する化合物の同定;4価型候補ペプチドから、S03量体との結合活性を指標にスクリーニングを行う。細胞レベルでの抗Sタンパク活性の評価を行う。蛍光標識Sタンパクを発現させたHEK293細胞ならびにMDCK細胞を各4価型ペプチドで処理し、amphisome形成能ならびにSタンパク隔離能を共焦点レーザー顕微鏡を用いて評価する。最終的に、細胞レベルでのSARS-CoV-2感染性に対する阻害効果を検討する。SARS-CoV-2の感染ならびに増殖が確認できるVeroE6細胞を用い、SARS-CoV-2の増殖に対する各4価型ペプチドの阻害効果を検討する。ウイルスの増殖はプラークアッセイにて定量的に評価する。
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