我々は最近、EGF刺激によりエンドサイトーシスを誘導した時、細胞膜から小胞が形成される初期段階で、初期エンドソームマーカーであるRab5と後期エンドソームマーカーであるRab7が長時間同時に局在する小胞が存在することを見出した。このような遷移状態のオルガネラはこれまでに報告がなく、その形成メカニズムや役割は未知である。そこで、この小胞の特徴や運ばれる物質、形成に関わる因子を調べ、Rab5/7ダブルポジティブ小胞の生理的意義を明らかにすることを目指した。 はじめに、Rab5/7ダブルポジティブ小胞に局在する分子を調べ、EEA1およびSNX5が共局在することがわかった。Rab5/7ダブルポジティブ小胞は2-5 μmの一般的なエンドソームやリソソーム等の小胞と比較してサイズが大きかった。また、この小胞と共局在するSNX5はマクロピノソームのマーカー分子として知られていることから、Rab5/7ダブルポジティブ小胞はマクロピノサイトーシスによって形成されるマクロピノソームであることが示唆された。 次に、この小胞によって輸送される物質および輸送経路を調べた。Rab5/7ダブルポジティブ小胞はEGF刺激後に形成されることから、EGF受容体がこの小胞内に含まれているかどうかを調べた。その結果、Rab5/7ダブルポジティブ小胞とRhodamine標識EGFは共局在しており、この小胞はEGF受容体を輸送していることが示唆された。また、Rab5/7ダブルポジティブ小胞の挙動をタイムラプスイメージングで観察したところ、リソソームマーカーのみと共局在したことから、この小胞は分解経路に輸送されることが示唆された。 さらにRab5/7ダブルポジティブ小胞を電子顕微鏡観察したところ、膜を含む細胞質成分を内包していることを見いだされ、この小胞が新規自己消化システムに関与することが示唆された。
|