研究課題
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy,BNCT)は中性子と組織に取り込まれた元素であるホウ素との核反応により発生する粒子放射線により、選択的に細胞を殺すという原理に基づく放射線療法で、がん細胞と正常細胞の区別が可能な「正常細胞に非常に優しいがん治療法」であり、本研究は特にホウ素化フェニルアラニンBPAの2つの鏡像異性体であるL体とD体という「分子キラリティ」認識が悪性腫瘍の薬物治療に有効な「選択毒性」に繋がることを着想し、トランスポーターを標的とする新規BNCT増感薬開発を目指す。初年度「ヒトLAT1発現腫瘍由来細胞における不斉化合物in vitro取り込み評価」に関しては、研究分担者の松川が保有するLAICP-MS(レーザアブレーションICP質量分析)を用いた細胞内ホウ素測定システムの立ち上げを行い、LAT1及びLAT2安定発現細胞に取り込まれた微量ホウ素の同定に成功し、BNCT増感効果および毒性軽減効果評価のための基盤を確立したことを受け、昨年度腫瘍型であるLAT1及び正常型であるLAT2の選択性を高めて行くことを目指したが、研究代表者が年会長を務める第96回日本薬理学会年会/JPW2022大会の準備のために2022年の後半は研究の遂行が困難となったため、1年の補助期間延長の申請を行い、承認が得られ、2023年度の1年を用いて、LAT1およびLAT2選択性の検討を再開した。その結果、選択性の基盤となるそれぞれの阻害薬の特性を検討により、LAT1阻害薬JPH203のLAT1選択的阻害の確認に成功し、LAT2阻害薬KYT0284のLAT2阻害効果はやはり確認することが難しいことが明らかになった。本研究課題の期間は終了となったが、今後も化合物S12の構造を基にした不斉化合物の構造設計を行い、ラセミ体、およびD体, L体の新規ホウ素化合物合成を継続してゆく予定である。
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