研究課題
本研究では、概日リズムとうつの関連研究から偶発的に生まれたレジリエンスモデルをもとに、レジリエンスの分子的基盤である時計タンパク質のキナーゼを同定し、その阻害剤の開発とともに、これまでにない全く新しい作用機序の気分安定薬、抗うつ薬の開発の基盤を提供する。またレジリエンスの分子カスケードを明らかにする。さらにレジリエンスの標的脳部位を探索する事を目的とする。時計タンパク質PER2の変異体ノックイン(KI)マウスをレジリエンスモデルとして確立した。変異体の周辺アミノ酸配列はキナーゼであるGSK3betaのリン酸化モチーフ「S-X-X-X-S-P」に対応しており、GSK3betaによるN末端側のセリンのリン酸化にはC末端側のセリンがあらかじめ別のプライミングキナーゼによってリン酸化される必要がある。またこの部位はプロリンと隣接しているため、このプライミングキナーゼはプロリン指向性キナーゼである。本研究ではプライミングキナーゼの探索とともに、レジリエンスの分子カスケードを明らかにするためにシグナル分子の網羅的探索、さらにレジリエンスの神経回路を明らかにするために標的脳部位の探索を行う。
2: おおむね順調に進展している
プライミングキナーゼの探索:(a)候補阻害剤によるスクリーニング:MAPKファミリーやCDK5などの各種キナーゼ阻害剤を投与した培養細胞よりタンパク質を抽出してウェスタンブロット解析に供し、リン酸化抗体のシグナルを指標に阻害剤の効果をスクリーニングした。(b)si RNAライブラリーを用いたスクリーニング:網羅的siRNAライブラリーを用いて、培養細胞に導入し、上記同様リン酸化抗体のシグナルを指標にその効果をスクリーニングした。現在解析中である。(c)リン酸化タンパク質を合成したライブラリーでのスクリーニングを行った。現在解析中である。
上記スクリーニングの結果を絞り込み、ターゲットを同定する。本研究では、リズムとうつの関連研究から偶発的に生まれたレジリエンスモデルをもとに、レジリエンスの分子的基盤である時計タンパク質の新規キナーゼを同定し、その阻害剤の開発とともに、新しい作用機序の気分安定薬、抗うつ薬の開発の基盤を提供する。またレジリエンスの分子カスケードを明らかにする。さらにレジリエンスの標的脳部位を探索する。本研究の成果は、物質的根拠のないレジリエンスに対して分子的基盤を与えるものであり、これまで生物学的理解が進まなかったうつ病研究領域に新たな概念を提唱するものである。また生理学・薬理学的なストレス研究
レジリエンスモデルマウスの繁殖に時間を要し、RNA-seq実験が年度を跨ぐことになった、本年度、当該実験を推敲する予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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