概日リズムとうつの関連研究から偶発的に生まれたレジリエンスモデルをもとに、レジリエンスの分子的基盤である時計タンパク質のキナーゼを同定し、その阻害剤の開発とともに、これまでにない全く新しい作用機序の気分安定薬、抗うつ薬の開発の基盤を提供する。 時計タンパク質PER2の変異体ノックイン(KI)マウスをレジリエンスモデルとして確立した。変異体の周辺アミノ酸配列はキナーゼであるGSK3のリン酸化モチーフ「S-X-X-X-S-P」に対応しており、GSK3;によるN末端側のセリンのリン酸化にはC末端側のセリンがあらかじめ別のプライミングキナーゼによってリン酸化される必要がある。またこの部位はプロリンと隣接しているため、このプライミングキナーゼはプロリン指向性キナーゼである。本研究では候補阻害剤によるスクリーニングとして、MAPKファミリーやCDK5などの各種キナーゼ阻害剤を投与した培養細胞よりタンパク質を抽出してウェスタンブロット解析に供し、リン酸化抗体のシグナルを指標に阻害剤の効果をスクリーニングした。(2)si RNAライブラリーを用いたスクリーニングとして、約30000個の遺伝子を網羅的にsiRNAでノックダウンを行い、リン酸化抗体免疫組織学的手法でスクリーニングを行った。1次スクリーニング陽性のものを2次スクリーニングで検証したところ、確認が取れるものは得られなかった。(3).In vitro リン酸化アッセイとして、480個のキナーゼを実際に作製し、PER2 リン酸化抗体を用いてin vitro リン酸化アッセイを行い、GSK3をはじめとする4つのキナーゼをPER2 リン酸化に重要なキナーゼとして同定した。阻害剤を用いた実験により、これらのキナーゼが細胞レベルで実際にPER2リン酸化に重要であることを確認した。
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