研究課題/領域番号 |
21K19354
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 荘平 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90186239)
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研究分担者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
原口 竜摩 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00423690)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 組織化学 / 破骨細胞 / 精子形成 |
研究実績の概要 |
組織切片上で、蛋白質や糖鎖などの検出には免疫組織化学が、核酸の検出にはin situ hybridization法が開発され、多くの形態学的研究や病理診断に応用されている。本研究の課題であるメチル化シトシンは、エピジェネティクス制御機構の主体をなすDNA修飾であり、その異常は様々な病態形成に関与している。しかしながら、遺伝子の特定部位のメチル化シトシンの存在がもたらすエピジェネティクスな変化を形態で捉える手法は、未だに開発されていない。標的のメチル化シトシンに対してオスミウム酸錯体を形成し、標的DNA との間に強固な結合を形成するプローブ作製を中心に行い、メチル化部位特異的なプライマー配列と、組織切片・染色体標本上でのin situ DNA増幅法(Padlockプローブ法)の条件最適化を重点的に行った。単一遺伝子上のたった1個のメチル化シトシンの存在を、光学顕微鏡下で検出し、病理診断への応用研究を行うために、スライドガラス状にメチル化、非メチル化DNAのメチル化を固着させた後、ガラススライド上で結合反応、増幅反応を行った。細胞・組織切片上でのメチル化シトシン-標識グアニン複合体の検出(培養細胞を用いた予検討)in situ hybridizationに用いる細胞の固定条件を決定するために、種々の固定液、固定時間、固定後処理について検討を開始している。さらに、Padlock法での合成過程で伸張するDNAを直接螢光標式することにより、更なる感度の向上を図り、単一メチル化シトシン塩基の組織細胞化学的検出が出来る様になっており、対象とする遺伝子をマウスのRANK遺伝子(破骨最奥分化因子受容体)として前破骨細胞および精子形成に関わるとの報告を受けて、マウス睾丸組織でのメチル化状態を検討開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本組織細胞化学会で、発表の機会を得て、ワークショップとして成果の一端を報告できた。この発表に向けて、脳組織や硬組織への展開などの新たな目標を設定することが出来た。技術的な困難さは、ガラススライド上での条件設定を綿密に行ってほぼ再現性のある条件を決めることが出来た。遺伝子の増幅については、Padlocl法によるDNAの進展がうまくいき、しかもオスミウム酸処理による固着化により、目的物質からの流出による移動は無く、良好な結果が得られており、当初の想定した目標を達成することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
Padlock法での合成過程で伸張するDNAを直接螢光標式することにより、更なる感度の向上を図り、単一メチル化シトシン塩基の組織細胞化学的検出を目指す。病理組織標本でのメチル化シトシンのin situでの検出とその病態解析への展開:これまで解析が不可能であった、①ゲノム刷り込み現象と癌、②再生・リプログラミングにおける脱メチル化の機構、③発生初期におけるメチル化シトシンパターンの形成過程、④老化現象・酸化的ストレスとミトコンドリアDNAのメチル化、および非CpG-island領域のメチル化による遺伝子発現制御と病理病態との関わりなどの応用研究へと発展させることが可能である。最終年度には、これらの応用研究への発展を目指して臨床病理学的検討を進める。本学病理学教室や病理検査室に おいて、過去に蓄積した病理組織を有効に活用する。その際、組織におけるDNAは多くの核内蛋白質などとクロスリンクされているため、強い蛋白分解酵素による前処理が必要であり、その最適な条件を、種々の蛋白分解酵素濃度や各種detergentを組合せて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半で物品購入に際して、海外発注の遅れが生じ、期日までに安定した試薬が入らない可能性が生じたため、次年度に繰り越しを行い、安定供給を待って、良質の試薬を購入することを計画したため。
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