研究課題
核内には膜構造がないにも関わらず、ユークロマチン、ヘテロクロマチン、核小体、Cajalボディー、specklesといった領域で核内は区画化されている。最近、これらの非膜構造体が液―液相分離による“液滴”によって形成されることが明らかとなった。特に、遺伝子発現制御においては、転写制御因子やnon-coding RNAなどが遺伝子領域と共に、疎水性相互作用やファン・デル・ワールス相互作用などを介して液滴を形成し、複数の遺伝子発現を統合的に制御することがわかってきた。また、液滴を形成するタンパク質は、天然変性領域(IDR: Intrinsic Disordered Region)を多く含む。筋萎縮性側索硬化症(ALS)においては、FUSやTDP-43などの変異型タンパク質が細胞質で凝集体(ストレスボディー)を形成することが神経細胞死を引き起こす要因となる。変異型FUSやTDP-43は細胞内の正常な凝集体の構成因子をストレスボディーに引き込むことによって、正常な凝集体の細胞機能を阻害すると考えられる。本研究で、核内構造体Cajalボディーの構成因子を同定したところ、多くのALS関連因子が構成因子として同定された。このような解析から、ALSではストレスボディーの形成によってCajal bodyの機能が阻害され、神経細胞の機能低下が引き起こされる可能性が示唆された。今後の研究によって、Cajalボディーの機能低下とALS発症機構との関連についてさらに解析を行う予定である。
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