研究課題
本研究では、血流に起因する内腔圧が血管新生を制御する機構とその生理的・病的な意義の解明を目的に研究を実施した。本年度は、発生期血管新生における内腔圧の役割について解析を行った。ゼブラフィッシュの腸血管は、胎生期に形成されるsubintestinal vein（SIV）に由来する。血管新生によるSIVの形成過程をライブイメージングにより観察したところ、SIVの元となる血管が、総主静脈の腹側に頭尾軸に沿って配向するように形成され、その後、同血管から背側・腹側の両方に血管が出芽し、血管枝を伸長させつつ腹側へと移動していくことが分かった。その後、これら血管の血流が開始した途端、腹側に伸びる血管枝が退縮し、機能的なSIVが形成された。血管枝が退縮する機構について解析を行ったところ、血管枝に血流が流れ込み、管腔が拡張し、内皮細胞に伸展刺激が負荷されることで血管枝が退縮することが示された。以上の結果から、血流に起因する内腔圧は、血管枝の退縮を誘導することで、SIV形成時の血管リモデリングを惹起し、機能的なSIV形成に寄与していることが示された。本研究期間を通して、創傷治癒過程の血管新生における血流に起因する内腔圧の役割を発見し、その制御メカニズムを解明した。特に、TOCAファミリーに属するBARドメイン含有タンパク質は、血管新生における内皮細胞遊走を司る重要なアクチン重合制御因子であるとともに、内腔圧センサーとしても機能し、創傷治癒における血管新生を厳密に調節していることを明らかにした。さらに、同機構が発生期におけるSIVの形成を制御していることを発見した。今後、がんなどの病的血管新生における、内腔圧の役割について解析を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)
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