研究課題
Gタンパク質共役型受容体 (GPCR)の中には、細胞膜上でヘテロマーを形成し、受容体のリガンド親和性やシグナル伝達などの機能変化を引き起こすものがある。病態生理的条件下では、GPCRのヘテロマー化は副作用を抑えた創薬のターゲットとして注目されている。例えば、モルフィネによる副作用の一つである痒みは、μオピオイド受容体のアイソフォームであるMOR1D受容体(Gi 結合型)が中枢の痒み受容体GRPR(Gq 結合型)と結合しヘテロマー化する事に起因する(Liu XY., et al., Cell, 2011)。MOR1Dに結合したモルフィネは GRPR-Gq-PLCβという分岐経路を活性化(クロスアクティベーション)して痒みシグナルを伝達する。これまで、GPCRの結合によるクロスアクティベーションなどの機能変化のメカニズムは全く分かっておらず、構造生物学を用いた解析が求められている。しかし、創薬標的であるクラスA-GPCRには構造生物学に適した安定的なヘテロマー形成の例は無く、GPCRヘテロマーの構造解析は世界で誰も成功していない。そこで、本研究ではヘテロマーを安定化する抗体を開発し、GRPR-MOR1Dヘテロマーのクロスアクティベーションの分子機構を構造生物学的に解明することを目指す。独自のタンパク質精製技術と抗体作製技術を用いて、ヘテロマー認識抗体や、各々の受容体に特異的な抗体を人工的につなげたバイスペシフィック抗体などのヘテロマー安定化抗体を作製する。抗体安定化MOR1D-GRPRヘテロマーの構造情報はX線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡単粒子解析により原子分解能で明らかにする。本申請のヘテロマー安定化抗体取得技術は多くのGPCRヘテロマーの構造解析に応用できるため、ヘテロマー研究を大きく推進することが期待される。
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Structure
巻: 32(3) ページ: 352-361
10.1016/j.str.2023.12.008