研究課題
新型コロナウイルスは、細胞侵入に重要な役割を果たすスパイクタンパクのC末端側にS2サブユニットをもつ。本研究では我々が確立したS2サブユニットを標的としたペプチド設計法とin vitro 耐性誘導を組み合わせ、1)設計-2)評価-3)耐性ウイルス誘導-4)耐性機序の解明-5)耐性機序を利用し、より強力で薬剤耐性を生じにくい阻害剤を効果的にかつ短期間に開発することを目標とした。研究期間内にふたつの効率的な抗ウイルス活性の評価方法を確立した。ひとつは、非感染系かつハイスループットなELISA法であり、3時間以内にその評価を可能とする。本法は細胞等を利用しないため、培養中に起こりうる標的細胞に対する毒性やペプチドの分解などを考慮せず、ヒットペプチドを同定しうる。もうひとつは、標的細胞としてVero細胞と感染性ウイルスを用い、より簡便で迅速なMTT色素法を組み合わせた培養評価系である。これらを駆使し、ヘリックス構造に必須の51残基の両端からアミノ酸を欠失させたペプチドを約20合成し、ウイルス感染を抑制しうる重要な3か所のアミノ酸配列を同定することができた。ペプチド長を短くするためにこの3か所のうち2か所を有するペプチドを複数合成したが、一か所でも削除するとそのいずれでも活性が低下した。特にHR2領域中央にある部位は重要であり、アミノ酸置換で劇的に活性が低下した。これらのin vitroデータと構造予測AIであるAlphafold2を駆使し、効果発現と構造学的考察を加えて論文報告をした。本研究では、タンパク間相互作用解析、構造予測、感染実験を学理的に融合し、新型コロナウイルスをモデルとして抗ウイルス効果を有するペプチドを実際に同定することにより、迅速かつ安全に感染症治療ペプチド薬の開発を行う研究方針を確立できることを証明した。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 2件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 17件)
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