研究課題/領域番号 |
21K19369
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渋谷 和子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00302406)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫受容体 / 特発性肺線維症 / 分子標的療法 / 炎症 / 線維化 |
研究実績の概要 |
特発性肺線維症 (Idiopathic Pulmonary Fibrosis : IPF) は、原因不明の難治性で進行性の肺線維症であり、診断確定後の平均生存期間は3-5年(中央値が2.5-3.5年)と極めて予後不良な疾患である。現在、治療薬としては、ピルフェニドンとニンテダニブなどの抗線維化薬があるが、病気の進行を遅らすのみで、治療下でも2年生存率は62%と低い。症状も呼吸苦を伴うことから、患者のQOLは極めて悪く、本疾患の克服は社会的なニーズとなっている。 DNAM-1は、T細胞をはじめ免疫細胞に発現する活性化受容体である。これまでに私たちはDNAM-1のリガンドがCD155であることを同定し、DNAM-1とCD155との結合がヘルパーT細胞からのIFN-γの産生を促進し、Th1免疫応答を活性化することや、NK細胞やCD8+ T細胞の細胞傷害活性を促進することなどを明らかにしてきた。さらに、最近注目されている自然リンパ球ILCにおいても、DNAM-1はその活性化に寄与している。 本研究において、私たちはDNAM-1とリガンドCD155の結合がIPFの病態に関与していることが示唆するデータを得たが、現時点では、その詳細は不明である。今後は、どの細胞に発現しているDNAM-1とCD155の結合が、どのようにIPFの病態に関与しているのか、その病態メカニズムを明らかにしていく。また、抗DNAM-1中和抗体の投与によって病態の改善が認められるか等を検討し、DNAM-1を標的としたIPFの新規治療法開発の可能性を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特発性肺線維症 (Idiopathic Pulmonary Fibrosis : IPF) は、原因不明の難治性で進行性の肺線維症であり、診断確定後の平均生存期間は3-5年と極めて予後不良な疾患である。最近の研究では、IPFは免疫応答によって惹起される炎症が、その病態に関与していることが明らかになってきた。 DNAM-1は、T細胞をはじめ免疫細胞に発現する活性化受容体である。これまでに私たちはDNAM-1のリガンドがCD155であることを同定し、DNAM-1とCD155との結合がヘルパーT細胞からのIFN-γの産生を促進し、Th1免疫応答を活性化することや、NK細胞やCD8+ T細胞の細胞傷害活性を促進することなどを明らかにしてきた。さらに、最近注目されている自然リンパ球ILCにおいても、DNAM-1はその活性化に寄与している。 本研究において、私たちはDNAM-1遺伝子欠損マウスと野生型マウスにIPFを誘導すると、DNAM-1遺伝子欠損マウスにおいて有意にその病態が軽減していることを観察した。この現象がDNAM-1とリガンドとの結合によるものかを検証するために、次に応募者らは野生型マウスにIPFを誘導し、抗DNAM-1中和抗体を投与して病態を比較した。その結果抗DNAM-1中和抗体投与群では、コントロール抗体投与群に比較して、体重減少率の改善を認めた。また、病理組織所見では、線維化病態の指標となるAshcroftスコアの有意な低下を認めた。さらに、マッソントリクローム染色においても線維化領域の有意な減少を認めた。以上より、IPF病態へのDNAM-1の関与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DNAM-1がどのようにIPFの病態に関与しているのか、その病態メカニズムを明らかにし、DNAM-1を標的としたIPFの新規治療法開発の可能性を検討するために以下の方法でアプローチする。 まず、IPF病態におけるDNAM-1の関与のメカニズムを明らかにする。具体的には、IPFを誘導したDNAM-1遺伝子欠損マウスと野生型マウスの肺胞洗浄液、肺組織、所属リンパ節における免疫細胞の数と割合、活性化マーカーを比較検討し、DNAM-1がIPF病態を形成するどの免疫細胞に影響を及ぼすのかについて明らかにする。また、サイトカイン産生の比較検討し、DNAM-1によって制御されるサイトカイン産生とIPFの病態の関係を明らかにする。 次に、DNAM-1を標的とした新規治療法の開発の可能性をマウスモデルにて検討し非臨床POCを取得する。具体的には、IPFを発症した野生型マウスに種々の濃度の抗DNAM-1中和抗体を投与し、その病態改善効果を呼吸機能、肺浸潤免疫細胞のサイトカイン産生、病理組織の線維化所見などを指標に検討する。また、既存薬ニンテダニブと抗DNAM-1中和抗体のIPF治療効果を比較検討する。さらに、両者併用による相加効果を解析する。 IPFの有病率は10万人中13-20人とされており、国内においても15,000人以上の患者がいると報告されている。診断確定後の平均生存期間は3-5年(中央値が2.5-3.5年)と極めて予後が悪い。治療薬としては、ピルフェニドンとニンテダニブが承認されているが、これらは病気の進行を遅らせるのみで、IPFの根本的な克服には至っていない。上記解析により、DNAM-1のIPF病態への関与が明らかとなり、非臨床POCが取得できれば、DNAM-1を治療標的としたIPF新規治療法開発への臨床応用が期待できる。
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