研究課題/領域番号 |
21K19371
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新田 剛 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (30373343)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | T細胞 / 抗原受容体 / TCR / レポーターマウス |
研究実績の概要 |
「1つのリンパ球(T細胞、B細胞)は1種類の抗原受容体を発現する。」この原則は現代免疫学における根幹原理のひとつである。しかし、TCRa遺伝子の対立遺伝子排除の不完全性により、1つのT細胞の表面に2種類のTCRが同時に発現することがある。このような2種類のTCRをもつ「Dual-TCR T細胞」は、2種類の抗原への交叉反応を示すため、免疫学の原則から逸脱する。しかし生体内のDual-TCR T細胞の検出は容易ではなく、Dual-TCR T細胞の意義については不明な点が多い。本研究では、Dual-TCR T細胞を検出・単離可能なレポーターマウスを作製し、Dual-TCR T細胞の生理的意義を解明することを目的とする。 ① TCRa遺伝子の定常領域に、2Aペプチドによってレポーター遺伝子(ZsGreenまたはhCD2)を連結し、機能的なTCRaの発現を反映するレポーターマウスを作製した。これらのレポーター系統どうしを交配し、ZsGreen+ hCD2+ Dual-TCR T細胞を検出することに成功した。さらに、2種類のTCRaを表面に発現するT細胞を検出するため、このレポーターマウスマウスをもとにして、定常領域の細胞外部位にエピトープタグ(ALFAまたはMyc)を挿入したマウスを作製した。 ② ①で作製したレポーターマウスおよびエピトープタグマウスを用いて、T細胞をフローサイトメーターで解析した。末梢T細胞のおよそ20%が両アレルでin-frameの遺伝子再編成を受けたTCRaタンパク質を発現し、そのうちの約30%は2種類のTCRaを細胞表面に出していることが明らかになった。すなわち、Dual-TCR T細胞を検出する世界初のモデル動物の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
① TCRa遺伝子の定常領域に、2Aペプチドによってレポーター遺伝子(ZsGreenまたはhCD2)を連結し、機能的なTCRaの発現を反映するレポーターマウスを作製した。これらのレポーター系統どうしを交配し、ZsGreen+ hCD2+ T細胞を検出することに成功した。さらに、2種類のTCRaを表面に発現するT細胞を検出するため、このレポーターマウスマウスをもとにして、定常領域の細胞外部位にエピトープタグ(ALFAまたはMyc)を挿入したマウスを作製した。 ② ①で作製したレポーターマウスおよびエピトープタグマウスを用いて、T細胞をフローサイトメーターで解析した。末梢T細胞のおよそ20%が両アレルでin-frameの遺伝子再編成を受けたTCRaタンパク質を発現し、そのうちの約30%は2種類のTCRaを細胞表面に出していることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
レポーターマウスおよびエピトープタグマウスを用いて、生体内の各臓器やリンパ組織におけるDual-TCR T細胞を精査する。Dual-TCR T細胞が胸腺で生成される機序、腸管や粘膜リンパ組織における局在の有無、T細胞のエフェクター機能との関連、加齢に伴って変動する可能性、などについて、フローサイトメトリーおよび免疫組織染色によって検討する。また、Dual-TCR T細胞をソーティングし、TCRレパトアシーケンス解析を行い、pMHC応答性や自己反応性について調べる。さらに、Dual-TCR T細胞を免疫不全マウスに移植し、生存能や増殖能、および自己免疫や腫瘍免疫への影響を調べる。
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