研究課題/領域番号 |
21K19376
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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研究分担者 |
竹本 訓彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40546793)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | A群レンサ球菌 / エピジェネティクス / メチル化酵素 / 高病原化 |
研究実績の概要 |
A群レンサ球菌感染では、通常咽頭炎や皮膚の化膿性疾患が主な疾患であるが、散発的に非常に侵襲性の高い劇症型感染症を引き起こすなど多彩な病態を示すことが特徴である。また、劇症型感染症は、特定の劇症型株が流行するのではなく散発的に発生することや、これまでのゲノム比較解析の情報などから通常の咽頭炎由来株が、生体内で何らかの原因によってゲノムのある領域に変異を起こすことで機能欠損体となり、様々な病原因子の過剰産生を起こすことで高病原化し、より侵襲性の高い疾患を引き起こすことが示唆されている。しかし、生体内でそのような変異が、いつ、どのように起きるのかについては明らかとされていない。そこで、本研究では、細菌のゲノムの特定の領域特異的に変異を起こすメカニズムについて、1) DNA修飾が単に部位特異的な修飾によって遺伝子発現の変化を誘導するだけでなく、変異導入を誘発することで高病原化を促すのか 2) 宿主生体内ではゲノム変異が高頻度で誘発されるのか、またそれがどこで起きるのか 3) 変異を誘発するような外的刺激は存在するのか、についての解析を行った。本年度は、DNA修飾に関わる修飾酵素の遺伝子破壊株を作製した。また、A群レンサ球菌が宿主細胞内に侵入してゼノファジーに認識されるが、全ての菌が排除されるわけではなくて、一部の菌はゼノファジーの分解から逃れる。そのため、感染した細胞から残存した菌を回収し、さらに再感染を行ったところ、一部の菌で、莢膜産生量が劇的に増加することが明らかとなった。現在これらの菌の遺伝子変異部位をショートリードシーケンサーによって解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピジェネティクスに関わる酵素群の遺伝子変異体の作製に若干手間取ったが、培養細胞を用いた変異誘発実験が順調に推移しており、予測された通りに反復感染にて自然変異体が出現することが明らかとなった。現在その変異部位のSNPsの解析を行っており、変異導入部位がランダムに起きているのか、あるいはある領域で認められるのかについて詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までは修飾酵素のうち、メチル化酵素にターゲットを絞っての解析を行っているが、現在共同研究者である竹本にうよりmutSの変異体も作製できており、さらに詳細な解析を行う予定としている。
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