研究課題/領域番号 |
21K19377
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
堀江 真行 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (20725981)
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研究分担者 |
岩本 将士 名古屋大学, 理学研究科, 招へい教員 (40825882) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | デルタウイルス / サテライトウイルス / ヘルパーウイルス / サテライトRNA |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、主にスズメ目の鳥のデルタウイルス(passerine deltavirus: paDeV)の感染性ウイルス粒子の形成機構について解析を行った。 昨年度、paDeVの感染性ウイルス粒子を放出できる細胞株を1つ発見した(ここでは細胞株Xとする)。そのメカニズムとして、①細胞株Xは何らかのウイルスに感染しており、そのウイルスのエンベロープタンパク質がpaDeVのヘルパーとなる可能性、②細胞株Xはヘルパーとなり得るタンパク質をコードしている可能性が考えられる。これらの仮説を検証するため、細胞株Xに加え、感染性ウイルス粒子を放出できない他の細胞株2つ(細胞株A、Bとする)とともにトランスクリプトーム解析を行い、それぞれの細胞株の遺伝子発現パターンを比較した。その結果、細胞株Xでのみ発現している遺伝子Yを発見した。この遺伝子Yの影響を実験的に調べるため、遺伝子Yを細胞株Aに導入し、paDeVを感染させた。驚くことに、遺伝子Yを導入することによって、細胞株Aにおいても細胞株Xと同様にpaDeVの感染性粒子が放出されることが明らかとなった。これらの結果より、paDeVのヘルパーを同定し、そのウイルス粒子の形成機構の一端を解明できたと考えられる。 また、paDeV以外の動物由来デルタウイルスの人工合成系の作出も試みた。コウモリ由来デルタウイルス(DrDV-AおよびDrDV-B)とシカに由来するデルタウイルス(ovDeV)の人工合成系を作出するため、これらのウイルスゲノムをタンデムに持つ発現プラスミドおよび、これらのウイルスのデルタ抗原に対するペプチド抗体を作成した。その結果、これまでにDrDV-AおよびovDeVの人工合成系の作出に成功した。DrDV-Bについては、抗体の特異性が低いためデルタ抗原を特異的に検出できなかったため、ウイルスの人工合成が成功しているかどうかは不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
paDeVの粒子形成にかかわるタンパク質を同定することができ、当初の大きな目的のひとつを達成したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
paDeVについてはさらなる実験を行い、ノックアウト実験などにより、遺伝子Yがウイルス粒子形成の責任遺伝子であることを証明する。また、他のデルタウイルスについても遺伝子Yの関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウイルスを検出するための抗体の作成に必要な抗原の発現・精製が技術的に困難であり、種々の条件を試しているおり、本年度内に抗原の準備と免疫を終えることができなかったため。
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