研究課題
プロリン異性化酵素Pin1とは、リン酸化Ser/Thr-Proを含む配列を認識し、プロリンとそのN端側のアミノ酸と間のペプチド結合をcis体からtrans体に変化させることで標的タンパクの機能変化を導くユニークな酵素である。我々は、Pin1がSARS-CoV-2の増殖に必須の役割を果たしていることを発見した。具体的には、Vero/TMPRSS2細胞にPin1 siRNA処理あるいはPin1阻害剤添加を行うと、SARS-CoV-2の増殖がほぼ完全に抑制され、Vero/TMPRSS2細胞も障害されない結果を得た。さらに、SARS-CoV-2感染有無のVero/TMPRSS2細胞からのcell lyzateを可溶化した後、GST-Pin1を取り付けたビーズと混合し、結合タンパクを検索したところ、SARS-CoV-2のNタンパクにPin1が結合することが見出された。さらに、我々が開発してきた数百種類の新規Pin1阻害薬から、強いSARS-CoV-2の増殖抑制効果を発揮する化合物をスクリーニングし、さらに最適化も進めた。その結果、EC50で1μM以下の濃度で、SARS-CoV-2の増殖を抑制できるPin1阻害薬化合物を数個、開発することに成功した。また、興味深いことに、Pin1を阻害することで、増殖が強く抑制されるウイルスが複数、存在することが明らかになった。従って、COVID-19が終結しても、他のウイルス治療薬に用いれる可能性がある。ウイルスごとに、Pin1が関与するメカニズムは異なっている可能性があるが、必要に応じてPin1標的蛋白を同定し、分子メカニズムの詳細を明らかにしていく予定である。
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