研究課題
神経分泌タンパク質LGI1の病的バリアントは、遺伝性側頭葉てんかんを引き起こす。これまでに、私共はLGI1の受容体としてADAM22を見出し、昨年度(2022年度)は、国際共同研究により、ADAM22のホモ接合型バリアントもしくは複合ヘテロ接合型バリアントを有する19名の常染色体潜性遺伝のてんかん脳症患者を見出し、「ADAM22てんかん性脳症」という新たな疾患分類を提唱した(Brain 2022)。そして、13種類のADAM22病的バリアントの分子病態を明らかにした。本年度(2023年度)はさらに、チェコ共和国のNoskova 博士等との共同研究にて、新たなADAM22の病的バリアント(ADAM22c.2714C>T; S905F)を見出した(Noskova L, Fukata Yら, Brain Commun 2023)。両アリルにADAM22 S905Fを有する児は、焦点てんかん、中程度の神経発達症を示した。私共はS905FがADAM22のC末端領域に位置し、足場タンパク質PSD-95との結合モチーフに相当することに着目し、両者の結合に及ぼす影響を検討した。その結果、ADAM22 S905Fは野生型ADAM22に比較して、PSD-95に対する結合能が約20%にまで低下していることを見出した。さらに、ADAM22 S905FはPSD-95ファミリーに属するPSD-93やSAP102に対しても同様に結合能が低下していることを見出した。興味深いことに、約5%のローマ系の人々はこのS905Fバリアントをヘテロ接合体として有することが示唆された。また、ミオキミア症状や、知的発達症、痙攣発作を呈する患者で報告されたLGI3バリアントについても解析を進め、その病態機構やLGI3の生理機能についても明らかにした(Miyazakiら,Cell Rep 2024)。
1: 当初の計画以上に進展している
新たなADAM22バリアントの性状解析に加え、LGI1ファミリー分子LGI3の病的バリアントの病態機構を明らかにし、論文発表を行った。
1. さらなるADAM22ファミリーやLGI1ファミリーのバリアントを探索する。2. ADAM22ファミリーやLGIファミリーの病的バリアントの性状解析を進める。特にLGIファミリーの分泌量やADAM22ファミリーの細胞膜発現量への影響を定量的に調べる。
(次年度使用額が生じた理由)準備済みの研究リソースを用いて効率よく実験をおこなえたことにより、予定していた物品費の執行が減少した。(使用計画)新たに見出しつつあるてんかん関連タンパク質のバリアント解析に必要となる物品費(イメージングや神経細胞培養等)およびその他(動物飼育費、共通機器室使用料など)として、計画的に執行する。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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