霊長類COVID-19モデルによる新型コロナウイルス再感染における肺炎病態の検討

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K19395
• 研究機関: 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
• 研究代表者: 保富 康宏 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, センター長 (90281724)
• 研究分担者: 浦野 恵美子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 研究員 (40794988)
• 研究期間 (年度): 2021-07-09 – 2023-03-31
• キーワード: COVID-19 / 霊長類 / 肺炎 / SARS-CoV-2

研究実績の概要

SARS-CoV-2感染COVID-19カニクイザルモデルを作製し、その病態を検討した。カニクイザルはヒトの病体を良く反映するモデルであることが、確認され、ヒトと同様に老齢個体では重度であることも示された。用いたウイルス巣は初期のWuhan型であり、感染後、中和抗体が検出限界以下になった70日後に同一の株を感染させたところ、用いたカニクイザルのいずれにおいても再感染は確認されなかった。これら個体では再感染後急激な血漿中の中和抗体の上昇が見られた。しかしながら老齢個体一頭では再感染が認められないにも関わらず、全身症状が急激に悪化し、再感染後7日目に死亡した。この個体ではCT画像から再感染直後に一過性に肺炎が引き起こされたことが確認できた。末梢血中のサイトカイン/ケモカインのプロファイルを再感染個体で検討したところ、再感染直後にサイトカインやケモカインが上昇していることが判明した。死亡個体においてはサイトカインストームが不￥引き起こされていることが分かった。現在、再感染の株を変え、再感染実験を継続中である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

再感染を含め、我が国での流行株、全ての感染カニクイザルモデルが樹立され、異種株間の再感染も一部では開始されている

今後の研究の推進方策

我が国の流行に合わせ、Wuhan型株感染させ3か月以上経過したカニクイザルにα株の再感染、同様にα株感染個体にδ株、δ株感染個体にオミクロン株（BA.1）、BA.1感染カニクイザルにBA.2株の再感染を行い、病態の検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス蔓延により、スタッフの一部が自宅勤務となり、その分の予算が使用されなかった。

研究成果

• [雑誌論文] Comparison of young and elderly COVID-19 cynomolgus macaque models reflecting human COVID-19 pathological conditions. (2022)
  • 著者名/発表者名: Urano E, Okamura T, Kamitani W, Kawaoka Y, Yasutomi Y.
  • 雑誌名: J Translational and Regulatory Science 巻: 118 ページ: 印刷中
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] COVID-19 cynomolgus macaque model reflecting human COVID-19 pathological conditions. (2021)
  • 著者名/発表者名: Urano E, Okamura T, Ono C, Ueno S, Nagata S, Kamada H, Higuchi M, Furukawa M, Kamitani W, Matsuura Y, Kawaoka Y, Yasutomi Y.
  • 雑誌名: Proc Natl Acad Sci U S A 巻: 118 ページ: 1-2
  • DOI: 10.1073/pnas.2104847118.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Highly susceptible SARS-CoV-2 model in CAG promoter-driven hACE2-transgenic mice. (2021)
  • 著者名/発表者名: Asaka MN, Utsumi D, Kamada H, Nagata S, Nakachi Y, Yamaguchi T, Kawaoka Y, Kuba K, Yasutomi Y.
  • 雑誌名: JCI Insight 巻: 6 ページ: 1-2
  • DOI: 10.1172/jci.insight.152529.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] ACE2-like carboxypeptidase B38-CAP protects from SARS-CoV-2-induced lung injury. (2021)
  • 著者名/発表者名: Yamaguchi T, Hoshizaki M, Minato T, Nirasawa S, Asaka MN, Niiyama M, Imai M, Uda A, Chan JF, Takahashi S, An J, Saku A, Nukiwa R, Utsumi D, Kiso M, Yasuhara A, Poon VK, Chan CC, Fujino Y, Motoyama S, Nagata S, Penninger JM, Kamada H, Yuen KY, Kamitani W, Maeda K, Kawaoka Y, Yasutomi Y, Imai Y, Kuba K.
  • 雑誌名: Nat Commun 巻: 12 ページ: 1-2
  • DOI: 10.1038/s41467-021-27097-8.
  • 査読あり