研究課題
我々はSARS-CoV-2Wuhan株は再感染しないことを霊長類において報告した(Urano et al., PNAS2021)。しかしながら再感染しなくても重度な肺炎を誘発するサイトカインストームを引き起こすことが一部の個体で確認された。SARS-CoV-2は新たな株が次々と出現し、感染を拡大させているが、再感染の有無や病態についての詳細な報告はない。我々は霊長類を用いて異種株間における再感染と病態の検討並びに既に人で使用されているmRNAワクチンを用いて感染における肺病態を検討した。再感染においては異種株では感染が成立した。オミクロン株においては同一株においても再感染は認められた。しかしながら、再感染においては排出されるウイルス量は少なく、病態も軽度であった。ワクチン接種カニクイザルにおける解析ではWuhan株に対しては明らかなウイルス抑制効果が咽頭スワブ、鼻腔スワブにおいて認められた。それに対してオミクロン株BA.2に対しては顕著なウイルス産生抑制効果が咽頭スワブ、鼻腔スワブにおいては認められなかった。ワクチン接種カニクイザルにおいてSARS-CoV-2Wuhan株感染後7日目で解剖を行ったところ、対照群では肺を中心にウイルスが認められたのに対し、ワクチン接種群ではウイルスは認められなかった。一方、咽頭スワブおよび鼻腔スワブにおいてウイルス産生抑制効果が認められなかったSARS-CoV-2オミクロンBA.2株感染カニクイザルにおいても肺においては明らかなウイルス抑制効果が認められた。今回の課題ではWuhan、α、β、γ、δ株においては同一株において再感染は認められず、異種株では再感染が確認されたが、肺炎の悪化傾向は認められなかった。
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