研究課題/領域番号 |
21K19397
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野寺 康仁 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (90435561)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質トランススプライシング / ウイルス様粒子 / 薬剤耐性遺伝子 |
研究実績の概要 |
初年度は、レンチウイルスの仕組みを利用した「ウイルス様粒子(virus-like particle, VLP)」を細胞外からのタンパク質導入法として用いて、これにタンパク質トランススプライシングを媒介するsplit-inteinを組み合わせることで、ピューロマイシン代謝酵素(puromycin N-acetyltransferase, PAC)の活性制御を試みた。レンチウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgag-pol(gp)遺伝子を用いているが、これにC末端側split-intein(IntC)を付加したPACのC末端側断片(PACC)を融合し、接続部分にはHIVプロテアーゼによる切断配列を挿入した。エンベロープタンパク質であるヒト水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(vesicular stomatitis virus G-protein, VSV-G)をコードするプラスミドDNAと、上記の改変HIV gpをコードするプラスミドDNAを同時に細胞内導入し、得られたVLPを単離したところ、その内部においてIntC-PACCがHIV gpより切り出されていることを確認した。また、N末端側split-intein(IntN)を付加したPACのN末端側断片(PACN)であるPACN-IntNを発現する細胞に上記のVLPを添加するとピューロマイシンへの耐性が生じることを確認した。以上の成果は国際学術誌において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
VLPとsplit-inteinを組み合わせた「プロトタイプ」の酵素活性制御法を完成することができ、既に論文投稿に至っている。薬剤耐性酵素のような「常時活性」が必要なものについて、外部からの断片導入により十分な活性が得られたことは大きな成果であり、技術開発の初期段階としては非常に順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
HIV gpを用いた「プロトタイプ」の酵素活性制御法においては、遺伝子構築の難しさや、プロテアーゼ切断の効率・特異性が問題となる。また、ウイルス由来の様々なタンパク質が同時導入されるため、高濃度で使用した場合の毒性等が懸念される。今後の方策として、HIV gpに依らないVLPの形成および酵素断片の封入を目指し、種々の脂質結合ドメインなどの利用を検討する。また、それに伴うsplit-inteinの活性への影響を明らかにし、その対策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が想定よりも順調に進行し速やかな論文投稿に至ったため、物品費の余剰が生じた。しかしながら、前述のように、現在の「プロトタイプ」の開発技術には複数の問題があり、実用化に向けて解決が必要である。翌年度分と合わせることで、当初想定していたよりも多くの条件検討を行うことが可能となるため、酵素活性制御の効率や特異性をさらに高めることができると考えている。
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