研究課題/領域番号 |
21K19401
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60401072)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | RANKL逆シグナル / 癌免疫応答 / シグナル修飾抗体 |
研究実績の概要 |
RANKLは骨代謝と免疫系の交点に位置するシグナル分子であり、多彩な生理機能を発揮する。従来、RANKLと結合したRANK下流で活性化される順シグナルに関してほとんどの研究が行われてきた。申請者らは最近、RANKL逆シグナル経路が骨芽細胞分化および骨形成促進に寄与し、骨吸収と骨形成のカップリングを媒介することを見出したが、免疫系における逆シグナルの役割は未解明である。RANKL逆シグナルを選択的に抑制した遺伝子改変マウスを用いた予検討では、癌免疫応答性の増強が示唆された。この点を踏まえて本研究では、RANKL逆シグナルを遮断する薬剤が癌免疫応答を増強し、新規の抗腫瘍薬となる可能性を検証する。初年度は、RANKL細胞外ドメインに結合するscFvとIgG1 Fc領域の融合タンパク質を多数デザインし、RANKL逆シグナルを活性化するコンストラクト、および逆シグナルを抑制するコンストラクトの中から、タンパク質の安定性や産生性、マウスに投与した場合の体内動態特性、などの観点から評価に使用できるコンストラクトをそれぞれ選択し、組み換えタンパク質を取得した。これらのコンストラクトをマウスMC38細胞移植モデルに投与し、逆シグナルを抑制した場合には、逆シグナルを活性化した場合と比較して、腫瘍サイズの増大が抑制される事が明らかになった。また、腫瘍組織内に浸潤しているCD8+T細胞の解析をフローサイトメトリー手法で実施した。RANKL逆シグナルを抑制した場合にも、PD-1陽性率などに顕著な変化は生じていなかった。今後、他の腫瘍浸潤細胞への影響を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RANKL逆シグナルの活性化を修飾する抗体改変体を投与した場合にも、癌免疫応答が影響を受けることを確認できた。今後は、その作用がどの細胞を介して生じているのかを検証していく。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討から、RANKL逆シグナルの活性化を外部から投与した抗体改変体によって抑制した場合に、活性化を誘導した場合と比較して、腫瘍サイズの増大が生じる事が明らかになったが、一方で腫瘍組織中に浸潤しているCD8陽性T細胞の疲弊状況には、顕著な影響が認められなかった。今年度は、RANKL逆シグナルが、どの細胞を介して癌免疫応答に影響を与えているのかを特定するための解析を、P29A変異マウスなども用いた実験系で進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
P29A変異マウスの個体数確保に時間がかかるため、抗体改変体の選定と投与実験、腫瘍組織に浸潤しているリンパ球の解析などを先行して行い、変異マウスを用いた解析のウェイトを次年度に移したため。本年度は作出を継続している変異マウスも用い、RANKL逆シグナルが影響を及ぼしている細胞の特定を進める。
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