研究課題/領域番号 |
21K19412
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山本 一男 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70255123)
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研究分担者 |
三馬 聡 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30437892)
宮田 康好 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60380888)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞サイズ / がん / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞サイズ調節遺伝子として本研究代表者が同定したLargenが、肝臓と腎臓における発がんとその伸展に関して、見かけ上正反対の効果を示すことに着目し、それぞれの組織におけるLargenの発現と代謝への影響を解析することにより肝がん・腎がんの性質を見極め、その対処法を探ろうとするものである。この目的のために、ミトコンドリアの呼吸機能を精細に測定することができる細胞外フラックスアナライザーを用いた解析を進めた。本装置は、株化した培養細胞や血液由来の浮遊細胞については様々な測定法が既に確立されているが、本研究のように臓器の細胞を用いた例は未だ少ない。そこで、野生型のマウスの肝臓から肝細胞を単離し、測定に供するまでの実験方法の樹立を目指した。まず3種混合麻酔にかけたマウスを開腹し、腎臓上部の大静脈から灌流液を送液しながら肝門脈を切断して肝臓を灌流した。その後、リベラーゼ(通常使用されるコラゲナーゼよりも結果が安定している)を含む灌流液を通した後、細胞をほぐし出し、濾過・遠心作業により精製することにより、穏やかな条件で初代肝細胞を回収する手技を確立した。現在、この方法によって単離した肝細胞に対して細胞外フラックスアナライザーによる測定条件を策定している。またこれらの作業と並行して、肝臓と腎臓それぞれの臓器特異的にLargenの過剰発現を誘導するためのマウス系統の樹立に努め、その繁殖を進めている。さらに、ヒト肝細胞がんの病理検体の解析についても鋭意進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織から回収した初代細胞を用いての細胞外フラックスアナライザーによる測定は、まだあまり報告例が少ないため、そのための方法の確立と条件設定が必要であった。これにあたり、実際の手技だけでなく試薬の種類や量、処理時間などについて試行錯誤を伴う作業であったため時間を要した。また、臓器特異的にLargenを過剰発現するマウスについては、肝臓については樹立できたが、腎臓については系統構築に必要なマウスの入手に時間がかかったため、計画よりやや遅れている。また、ヒト肝細胞がんの病理検体の解析についても鋭意進行中であるが、検体が回収できるのも不定期であるため、ゆるやかに進めざるを得ないところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られている結果を統合した方法により、現在は安定して初代肝細胞を準備することができている。Largen過剰発現マウスの系統も準備できているので、肝臓を中心とした解析は計画に準じて進めていきたい。また、初代肝細胞に関して得られた知見を応用することにより、腎臓についても採取法と測定条件を確立することを急ぐ。合わせて腎臓特異的Largen過剰発現するマウスの系統についても注力していく。 上記の進捗状況と今後の推進方策に鑑み、より多くの個体を準備すべくマウスの飼育状況を拡充していく。これにより肝臓側の解析を進展させ、かつ腎臓側の実験の促進をはかり、さらに十分なデータの蓄積に努める。また、細胞外フラックスアナライザーによる解析で得られる知見をさらに発展的にがんの発症と進行への理解に結びつけるために、メタボロミクスなどの代謝関連の解析に加え、細胞死、細胞周期、DNA損傷修復などとの関わりについても調べていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅れによりマウスの使用予定数が初年度の計画を下回ったため、その飼育費用ならびにそれに付随する実験用試薬・消耗品の購入による出費が抑制された。次年度は研究を加速し、初年度と次年度分の計画を合わせた数のマウスの飼育、ならびに実験用試薬・消耗品の購入が見込まれる。
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