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2022 年度 実施状況報告書

臓器によって効果が異なる細胞サイズ調節遺伝子の作用点から理解する代謝と癌の関連

研究課題

研究課題/領域番号 21K19412
研究機関長崎大学

研究代表者

山本 一男  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70255123)

研究分担者 三馬 聡  長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30437892)
宮田 康好  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60380888) [辞退]
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード細胞サイズ / がん / 代謝
研究実績の概要

Largenは、細胞の「大きさ」の調節に関わる遺伝子として本研究代表者が同定したものであるが、これまでの研究により肝臓と腎臓におけるがんの発生とその伸展に関して見かけ上正反対の効果を示すことが分かっている。そこで、それぞれの組織におけるLargenの発現と代謝調節への関わりを解析し、肝がんと腎がんの性質を見極めることにより、その治療や予防に関する対処法を見いだせるのではないかと考えた。これまでに、マウスの肝臓から肝細胞を回収し、そのミトコンドリアの呼吸機能を精細に調べることができる細胞外フラックスアナライザーを用いた解析を行うための測定法を確立した。これを用いてLargenの発現を抑制した肝細胞における代謝を調べたところ、コントロールの野生型肝細胞に比べてミトコンドリアの活性が上昇する傾向があることが分かった。Largenの発現を抑制した肝細胞は野生型に比べて小さくなる傾向がある。一方で、Largenを過剰発現している肝細胞は通常よりも大きくなり、ミトコンドリアの量も増加している。このことから、Largenの存在がミトコンドリア機能を介して肝細胞の代謝制御に重要な役割を果たしていることが推察される。
以上の解析と並行して腎臓特異的にLargenを過剰発現するマウス系統を樹立した。その結果、このマウスでは近位尿細管のサイズが大きくなっていることが分かった。反対に腎臓特異的にLargenの発現を抑制すると致死となる傾向が見られた。このことは、近位尿細管の発生と生長の調節にLargenが重要な役割を果たしていることを示唆する。多くの腎がんが近位尿細管に由来することを考えると、その制御機構を解明することは非常に重要であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

組織から回収した初代肝細胞を用いての細胞外フラックスアナライザーによる測定は、試行錯誤を重ねて時間を要したが無事に軌道に乗せることができた。臓器特異的にLargenを過剰発現するマウスについては、先行する肝臓に続き腎臓についても鋭意進めていたが、腎臓内の特定領域の細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマスの導入に時間を要したため、予定よりも遅れることとなった。しかしながら現在では、両組織ともに過剰発現系に加えて発現抑制系のマウス系統も樹立するに至っており、今後の研究のさらなる発展に貢献するものと期待される。

今後の研究の推進方策

今後は主に腎臓特異的Largen過剰発現マウスの解析に注力する。ただし、Largenの過剰発現の効果が腎臓の近位尿細管に限られており、腎組織全体から当該器官のみを取り出して解析することは困難であるため、組織標本を主体とする代謝測定法を採用して解析に取り組む必要があると考えられる。このことは、新たな試行錯誤を要する可能性を孕んでいる一方、細胞死やDNA損傷を解析するための既存の方法との相性が良いため、複合的かつ統合的なデータの蓄積につながると考えられる。これらの解析手法を確立し、臓器特異的過剰発現マウスのみならず発現抑制マウスについても適用することにより、ここで得られた結果をさらに発展的に理解するために活かしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

腎臓特異的にLargenを過剰発現するために必要なマウスの導入に想定外の時間を要したため計画に沿った年次研究を遂行することが難しくなった。そのためマウスの繁殖ペースを落とさざるを得なくなり、結果として予算の余剰も生じたため、研究期間を延長することとした。この措置により、計画していた組織特異的Largen過剰発現マウスの調達も可能となったため、次年度には当該マウスを用いた解析を研究計画に沿って進めていくことができる。研究を加速するためにも繰り越した予算を投入して飼育するマウスの頭数を増やし、研究計画を完遂したいと考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 細胞とオルガネラのサイズ決定のしくみ2022

    • 著者名/発表者名
      原 裕貴、山本 一男
    • 雑誌名

      生体の科学

      巻: 73 ページ: 287-290

  • [産業財産権] 特許権2022

    • 発明者名
      宮田 康好、山本 一男、迎 祐太、酒井 英樹
    • 権利者名
      宮田 康好、山本 一男、迎 祐太、酒井 英樹
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2021/035438

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公開日: 2023-12-25  

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