研究課題/領域番号 |
21K19415
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村井 純子 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (60532603)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 抗がん剤 / DNA障害 / SLFN11 / 薬剤耐性 / 薬剤感受性 / ドラッグスクリーニング / 遺伝子発現 / ヒストン脱アセチル化阻害剤 |
研究実績の概要 |
Schlafen 11 (SLFN11)は、大規模がんデータベースの解析から、DNA障害型の抗がん剤の感受性とmRNA発現量が最も相関する遺伝子として報告された。それ以降、様々ながん種において、SLFN11の発現量がDNA障害型の抗がん剤の効果予測バイオマーカーとして有用であることが報告されている。これらの背景から、SLFN11の発現を高める薬剤を開発し、それにより抗がん剤感受性を増強し、non-responderを無くすことが本研究の目的である。一部のepigenetic modulatorsにその作用が報告されているが、SLFN11以外の遺伝子発現にも、多大な影響を与えるため、それ以外のカテゴリーの薬剤を探索する必要がある。本研究では、まず細胞ベースの薬剤スクリニーングの系を立ち上げた。定常状態ではSLFN11の発現が低く抑えられている細胞SLFN11遺伝子のATG直下に、ルシフェラーゼの断片となるHiBiT配列をCRISPR/Cas9システムを用いて挿入した。約4000種類の薬理活性をもつドラッグライブラリーを用いて、薬剤投与後16時間後にルシフェラーゼシグナルが高まる、つまりSLFN11のタンパク質レベルが高まる薬剤を同定した。同定した薬剤には、既知のepigenetic modulatorsであるヒストン脱アセチル化阻害剤が数種類含まれていた。別のカテゴリーの薬剤XとYも同定できた。本年度は、実際タンパク質レベルでSLFN11を高めるための、ドーズや時間経過について、二種類の細胞を用いて検討して、結果を得た。化合物XがSLFN11の発現を高めるパスウェイを、RNA-seqやシグナル阻害剤などを利用して特定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに同定したヒット化合物XとYについて、実際タンパク質レベルでSLFN11を高めるための、ドーズや時間経過について、二種類の細胞を用いて検討して、結果を得た。化合物XがSLFN11の発現を高めるパスウェイを、RNA-seqやシグナル阻害剤などを利用して特定した。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒット化合物XとYはともにSLFN11の発現を高めるが、HDAC阻害剤ほどではない。もともとHDAC阻害剤では、数千種類の遺伝子発現を変化させてしまうことが問題(SLFN11特異的に発現上昇させたい)だったので、ヒット化合物XとYがSLFN11をどの程度特異的に上昇させているかについて、代表的HDAC阻害剤をコントロールにプロテオーム解析をおこなう。その結果とともに論文発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰越金額があったため、実験計画を遂行するに十分な予算があり、今年度はわずかながらに次年度使用額が発生した。来年度の物品費として使用予定である。
|