SMARCA4のステータスによるフェロトーシスとアポトーシスの調節機構の解明を目的として次のような研究を実施した。1. SMARCA4 のクロマチンリモデリング機能によって制御される分子の同定:SMARCA4を欠失している非小細胞肺がんA427細胞のSMARCA4安定発現細胞を用いて網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-Seq)のデータ解析を実施した。まず、SMARCA4 の強制発現によってオープンクロマチンに変化した遺伝子のうちフェロトーシス抵抗性遺伝子を同定するために、公共データベースを利用して細胞株における発現がフェロトーシス誘導剤RSL3の感受性と逆相関する遺伝子について抽出したところ84遺伝子を同定した。とくにフェロトーシス抵抗性との相関が高く、フェロトーシスとの関連が報告されていない候補遺伝子としてSMYD3、LTBR、PFKPを同定した。2.細胞死調節因子の同定:フェロトーシス感受性が高い小細胞肺癌を用いた解析からCASP8遺伝子(Caspase8)が欠失あるいは発現低下していることが明らかとなった。そのため、Caspase8の発現がフェロトーシス感受性に影響するかについて検討した。その結果、Caspase8はNRF2を介した抗酸化シグナルを促進するp62/SQSTM1の発現を負に制御することでフェロトーシス感受性を制御する因子であることが分かった。そのため、CASP8が欠失している神経内分泌系腫瘍ではフェロトーシス抵抗性が亢進していることも細胞株データベースより明らかとなった。また、非小細胞肺がんH441細胞に対する阻害剤およびCASP8遺伝子ノックアウトの効果を検討したところ、CASP8の機能阻害によってp62/SQSTM1の発現が安定化することでフェロトーシス抵抗性を上昇することが明らかとなった。
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