研究課題
エネルギー代謝とNAD合成とは、ポジティブループの関係にある蓋然性が高い。しかし、高悪性がんの多くは、「エネルギー産生/NADホメオスタシス」の相互依存から脱却しているように見える。本研究では、このNAD低下への耐性を、高悪性がんの新たな「代謝リプログラム」と捉え、そのメカニズムを解明することを目的として種々の検討を行ってきた。NADサルベージへの感受性が低い腫瘍細胞におけるde novo NAD合成(トリプトファンやキヌレインからNADを合成)の意義を調べることにした。前年度において、上記経路の下流に位置する酵素NADSYN1に対する低分子阻害剤(STK459768. Chowdhry S. et al. Nature 2019)の無視できないオフターゲット効果が判明したため、代替手段として、de novo経路の最終反応を触媒する酵素QPRTに照準を合わせて検討した。ゲノム編集によってQPRT遺伝子ノックアウト細胞を作製し、NAD関連代謝の性状をしらべた。QPRT-KOによって、定常状態の細胞内NADレベルが若干低下する現象が観察された。一方、予想に反し、サルベージ経路抑制条件下の細胞内NADレベルは、QPRTの有無による違いはかなり僅かだった。De novo経路の他酵素のノックダウン実験においても、類似する結果が得られた。これら結果から、NADサルベージ阻害下でもNADレベルを維持できる腫瘍を支えるメカニズムが非常に複雑であることが示唆された。
すべて 2023 2022
すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)