研究課題
項目1:本年度は、PolyIC投与と高脂肪食摂取がマウス大腸にどのような影響を与えるかの解析を行った。PolyICは腹腔内投与するため、腹腔内マクロファージへの影響を解析した。マクロファージを単離し、RNAを回収して炎症性サイトカインの発現を比較したところ、PolyIC投与の場合はコントロールと比較し、TNFaやIFNgの発現が顕著に高発現していた。同様に、大腸組織を回収しRNA発現解析を行なったが、やはりTNFaやIFNgの発現が増加していた。病理組織学的解析を行なったが、免疫細胞の顕著な集積等は見られず、コントロールとの大きな差は見られなかった。次に、高脂肪食摂取マウスの解析を行なった。高脂肪食摂取マウスを解剖し、病理組織学的解析を行うと、大腸や小腸に顕著な差は見られないが、肝臓に脂肪を蓄積した細胞が高頻度で現れ、脂肪肝が誘導されていた。高脂肪食摂取の影響を受けた大腸上皮細胞の状態を詳細に解析するために、次に、オルガノイド培養を用いた検討を行った。高脂肪食を20週以上与え続けたマウス大腸(n=4)とコントロールマウス(n=3)からオルガノイドを樹立し、3日後、RNAを回収した。RNAシーケンス解析を行い、得られた結果をパスウェイ解析やGSEAにより解析を進めると、細胞周期関連遺伝子が活性化し、mTORC1シグナルの活性化も観察された。mTORC1シグナル経路はエネルギー制御に関わる経路であり、脂質代謝や脂質合成、オートファジー、糖代謝を制御する。高脂肪食を与え続けたマウスはこうした経路が活性化状態にあることが、本解析により明らかとなった。項目2:ヒトオルガノイドを用いた解析は、実験の進捗から鑑みて本年度は必要ではなくなり、実施しなかった。研究期間全体を通じ、大腸炎を引き起こすための様々な条件を詳細に検討したが、DSSを用いることが最も効率が良いことが示された。
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Cancer Gene Therapy
巻: 31 ページ: 527-536
Nature Communications
巻: 14 ページ: -
10.1038/s41467-023-42228-z