研究課題/領域番号 |
21K19422
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
籠谷 勇紀 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫応答研究分野, 分野長 (70706960)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 養子免疫療法 / キメラ抗原受容体 / 抗体医薬品 |
研究実績の概要 |
キメラ抗原受容体(CAR)導入T細胞は抗原特異的で高い細胞傷害効果を有するが、がん組織内における疲弊誘導などでそのエフェクター効果が減弱すること、及びがん細胞側の標的抗原の喪失などによる免疫逃避機構が働くことが問題である。 本研究ではCARを通じたエフェクター効果のみならず、CAR-T細胞から、例えば二重特異性抗体などの抗体医薬品を遺伝子レベルで製造・分泌させることで、さらに細胞傷害効果を高めることを目指している。今年度は特定の標的抗原に注目して、分泌に用いる抗体の遺伝子配列について、主にシグナルペプチド、リンカー配列の検討を行った。標的抗原を発現するがん細胞株との共培養の実験系で、がん細胞に対する細胞傷害効果の誘導、培養上清中への薬剤の分泌濃度などの観点から、適した配列を決定した。同分子は抗原を発現しない細胞には作用せず、抗原特異性が付与されていることを確認した。また次年度以降に用いるマウス腫瘍モデルの確立を行った。免疫不全マウス(NSGマウス)に腫瘍細胞株を投与した上で、ヒトCAR-T細胞を輸注する実験系で、腫瘍の増生を抑制できることを確認した。さらに腫瘍量やCART細胞の投与量を調整してCART細胞のみでは腫瘍増生を制御できないプロトコールを設定した。 次年度以降は複数の標的抗原を検討しながら、in vivoにおけるマウス腫瘍モデルで本治療システムが通常のCAR-T細胞と比較して優れた抗腫瘍効果を誘導できることを示す。同時に他臓器に対する毒性などを検証することで、特異性(安全性)の確認を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたin vitroの実験系による抗体配列の最適化を進めることができた(シグナルペプチド、リンカー配列など)。in vivo実験系については腫瘍モデルを確立したことから、次年度の研究計画に移行することができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作製した抗体製剤導入CART細胞の抗腫瘍効果を、in vivoの腫瘍モデルにおいて示すことを目標とする。特にCART細胞の疲弊による機能低下が指摘されている固形腫瘍モデルにおいて検証を行う計画とする。生体内における有効性の指標として、抗腫瘍効果(皮下腫瘍径、またはルシフェラーゼ遺伝子を安定導入した上でのin vivo imagingによる経時的な腫瘍量の定量)だけでなく、血液中の分泌抗体の濃度(ELISAによる定量)、他臓器への毒性(病理組織による評価)なども検証する。これらは前年度までに確立したNSGマウスにおける腫瘍モデルを中心として進めるが、一方で分泌される抗体医薬品が免疫原性を持つ可能性があるため、免疫系が正常のマウスにおいても検討を行う。この場合はマウスT細胞に抗体医薬品を分泌させ、中和抗体の産生や分泌抗体の血中濃度などを評価する。 以上の検討により本治療システムが生体内においても有効に作用することを証明することを今年度の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進行過程で、本年度に当初計画していた検証実験の一部を省略して次の研究計画に進めることができたため。その分を次年度の研究計画をより加速する目的で、物品費(動物動物、細胞培養試薬等)、及びその他(人工遺伝子合成)費目にあてる計画である。
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