研究課題/領域番号 |
21K19426
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 章円 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (40424684)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | セルアセンブリ / 領域内変化 / 領域間相互作用 / 睡眠 / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
記憶は物事を経験した時に活動した一群の神経細胞集団(セルアセンブリ)に保存され、何らかの刺激により特定のパターンで再活動することで記憶が想起されると考えられている。一方、物事を経験した時に観察された神経活動と類似の神経活動が「休息時や睡眠時(=オフライン)」にも同様のパターンで再生される(メモリーリプレイ)という現象が報告され、オフライン時の神経活動の重要性が示唆されている。 我々は繰り返し学習が必要な連合学習課題を用いて、①学習回数(日数)を重ねるごとに連合が促進し、記憶が強化する(記憶の質的遷移が誘導される)こと、②この強化は学習後の断眠により抑制されることを発見している。しかしながら、どの脳領域が、どのようにして記憶の質的遷移を誘導するのかは明らかではない。このような背景のもと、「繰り返し学習課題において、オフライン時に特定領域で、記憶を保持しているセルアセンブリが再活動し領域内変化や領域間相互作用が誘導されることで、連合が促進し記憶が強化される」と仮説を立てている。 この仮説を検証するため、初年度は繰り返し連合学習を制御する脳領域を検索し、様々な脳領域が繰り返し連合学習に関与すること、さらに興味深いことに各脳領域がそれぞれ必要とされるタイミングが異なることを発見した。さらに多脳領域よりセルアセンブリ活動をリアルタイムで計測し、同時に、それらの活動を操作する新規システムも構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、すでに確立済みの繰り返し連合学習課題を用いて、繰り返し学習後数時間にわたり様々な脳領域の活動をそれぞれ抑制し、その後の記憶を評価することで、連合記憶の質的遷移を制御する脳領域を検索した。その結果、複数の脳領域の活動抑制が学習能力の抑制を誘導したことから繰り返し連合学習は単領域ではなく、複数の領域が関与することが示唆された。 次にこれらの脳領域より学習時に活動したセルアセンブリの睡眠時における活動を捉え、それらの領域内及び領域間の活動変化を人為的に操作するシステムの構築に着手した。そして、①脳波(EEG)や筋電(EMG)を基に覚醒/睡眠状態を判別する「睡眠判定装置」、②カルシウムイメージング可能な「蛍光内視鏡」、③特定のパターンで光照射でき、光感受性タンパク質と組み合わせることで単細胞レベルの活動操作を可能にする「光刺激装置」を組み合わせたシステムを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築した新規システムを用いて、睡眠時のセルアセンブリ活動の領域内変化や領域間相互作用を計測・操作することで、記憶の質的遷移との相関関係を明らかにする。 まず、学習初期から記憶が強化されるまでの連合制御領域におけるセルアセンブリ活動を同時計測し、その活動の変化(例:同調や連続性等)を捉え、記憶の質的遷移の法則を明らかにする。 次に、新規システムを用いて睡眠時に上記で得られた法則を人為的に再現させ、その後の記憶の変化を評価することで、記憶の質的遷移とセルアセンブリ活動との関係性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会がオンライン大会となったため、旅費が不必要となった。さらに、構築したシステムが順調に完成し、予備実験等を少なくすることができたため、当初予定していた費用を抑えることができた。 これら生じた当該助成金は次年度で、主にウイルス作成費やマウスや実験器具などの購入費に充てる予定である。
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