研究実績の概要 |
高次脳機能を理解するためには、脳を構成する細胞の活動について、正確に計測・操作する技術が必要不可欠である。近年では、カルシウムセンサーと光遺伝学ツールを用いることで、神経活動計測・操作が生体においても可能となってきている。しかしながら、従来の手法では、①光遺伝学ツールがイメージングの励起光で活性化されてしまう、②異なる細胞種の活動同時に計測できない、など実用的な使用に向けては多くの課題が残っている。本研究では、生体で使用可能な新規光遺伝学ツールや活動イメージング用プローブをデザインすることで、生体においても多色イメージングと光遺伝学的操作が同時に可能な新規手法の開発をおこなう。 令和5年度は、前年度に獲得したオプシンと併用して利用可能なカルシウムセンサーの開発をおこなった。具体的には、2光子励起波長(1,040 nm)で使用可能な新規赤色カルシウムセンサーのスクリーニングをおこなった。その結果、既存の赤色センサーよりも高輝度かつ高S/N比な性能を持つカルシウムセンサーRCaMP3の開発に成功した。マウスを用いて生体カルシウムイメージングをおこなった結果、従来の2光子励起顕微鏡だけでなく広視野顕微鏡(FASHIO-2PM, Ota et al., Neuron 2021)による大脳皮質第5層の広域イメージングにおいても、個々のニューロンの活動を1細胞レベルで検出可能であることが明らかとなった。また、RCaMP3はファイバーフォトメトリーを用いた神経活動計測にも応用可能であることも分かった。
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