研究課題
初年度の研究を発展させ、プリオン持続感染細胞及びそのサブクローンを用いて以下の実験を実施して、仮説の実証に努めた。①アルカリフォスファターゼ(Alpl)関与の妥当性の検証に関わる実験: (1) 細胞中のAlpl活性とプリオン量には負の相関があることが明らかになった。一方、細胞膜ラフトに局在するAlplと正常型プリオン蛋白の相互作用については、技術的困難さのため明らかにできなかった。 (2) Alpl遺伝子のノックダウン効果の特異性については、ターゲット配列の変更などで確認できた。(3) 検討がまだであったAlplの残りの生理的基質やそれらの脱リン化物について、培養液への添加による正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べたが、両者に影響を与えるものはなかった。②Alplシグナル伝達系等の関連要素の探索に関わる実験: (1)Alplシグナル伝達系として報告があるPI3K/AKT系、MAPK系、Wnt/β-catenin系に対する様々な阻害剤を細胞培養液に添加して、正常型プリオン蛋白やプリオンへの影響を調べたが、細胞障害を起こさない濃度域では両者への影響は観察されなかった。(2)Alplは細胞膜上や小胞内においてアルカリ性環境で活性を発揮すると推測されることから、pHイメージング法を使ってAlpl局在と局所pHの関係を調べたが、両者の関連性を明らかにできなかった。この2年間の研究成果として、プリオン持続感染細胞においてAlplの発現がプリオン量に影響を与えることは種々の観点から確認できたが、その機序解明につながる手掛かりは得られなかった。また、細胞内の局所アルカリ性環境がプリオンの分解排除に関わるとの仮説については、仮説の正否を判断できないままであり、今後さらなる検討が必要である。
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