研究課題/領域番号 |
21K19436
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 洋子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80332500)
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研究分担者 |
新堀 哲也 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40436134)
阿部 太紀 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40810594)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | リンパ管 / RASがん原遺伝子 |
研究実績の概要 |
RASがん原遺伝子とその下流のシグナル分子の異常はリンパ管発生に関与し、その異常はリンパ管異形成を伴う疾患群となる(RASopathies)。その中でヌーナン症候群類縁疾患はは胎児期からの浮腫を呈し、出生後も頸部浮腫やリンパ管異形成を伴う代表的な疾患である。研究代表者がすでに作成したBRAF変異マウスでは胎児の皮下のリンパ管拡張や頸部のjuglar veinの拡張などリンパ管形成不全が明らかになった(Inoue et al Hum Mol Genet, 2014)。しかしながらRASがん遺伝子変異のリンパ管発生における機能はいまだ明らかではない。本研究ではRAS変異を培養リンパ管内皮に導入し、その表現型の変化や分子マーカーを明らかにすることと、RAS変異を有するマウス個体におけるリンパ管形成異常とその病態メカニズムを明らかにすることを目的とする。 今年度は、リンパ管内皮培養細胞に今後導入するためのコンストラクトを作成した。最近申請者らはリンパ管腫症にてsomaticなNRAS変異を同定したが、リンパ管の増殖制御に重要と考えられるためNRAS変異のコンストラクトも追加して作成した。RAS変異マウスにおけるリンパ管形成を評価するために、マウスの耳や皮膚におけるリンパ管の免疫組織化学法を検討した。この検討ではマウスでは耳におけるリンパ管と血管の染色法を確立した。さらにマウス個体(耳、皮膚、肺)からの初代リンパ管内皮培養法の検討を行った。すでにRAS変異をもつモデルマウスを用いて心臓リンパ管の染色を開始したが、12週では特に変化は認めないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RASのgermlineの変異はRASopathiesに同定されてきたが、それらの疾患では特に胎児期・新生児期にリンパ管異形成の症状を取るほか、成人になってからのリンパ浮腫を発生する。リンパ管異形成のメカニズムがその病態解明や治療の考案に重要な側面となっている。さらにRASのsomatic変異がリンパ管腫症や血管奇形に同定されてきたことより、その臨床スペクトラムは広がっている。本研究はRASの変異を持つリンパ管内皮細胞やモデルマウスについて横断的にリンパ管異形成を調べる研究であり、その遺伝子の種類による違いや下流のシグナル伝達分子を明らかにすることが、リンパ管異形成の治療法開発に役立つものと考えられる。今回は培養細胞に導入するためのコンストラクトの作成を行った他、リンパ管内皮の初代培養やマウスのリンパ管の評価方法について検討し、一定の方法を確立することができた。来年度以降に引き続き解析を継続したい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はリンパ管解析・評価のための染色法、培養法などの検討を行ってきた。マウスの耳を用いた染色は有用でありこれを用いてモデルマウスにおけるリンパ管形成を解析していく。心臓においては、近年、その病態発生時に心臓のリンパ管増生が異なることが報告されてきた。RAS変異を有するモデルマウスは心肥大、あるいはisoproterenol刺激時の線維化亢進を来すことをすでに観察しているので、そのような状態でのリンパ管の関与を調べてゆく。さらにリンパ管腫症に同定されたNRAS変異のコンストラクトもすでに作成したので、RASopathiesの遺伝子と共に解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は東北大学医学系研究科動物実験施設の工事に伴うマウス移動があり、マウス実験やマウスの飼育スペースの制限があり、使用できる動物のみを用いて実験を進め、動物実験の一部を縮小した。その実験を来年度施行予定である。
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