研究実績の概要 |
自己抗体によって惹起される免疫性疾患の分子標的治療として、抗CD19/20抗体によるB細 胞抑制により病原性抗体産生細胞を減少させる治療が多くの神経免疫疾患で臨床応用されつつある。しかしこれらの抗体療法では正常B細胞も抑制され重篤な感染症を来たす問題点がある。標的抗原分子と免疫グロブリンFc領域の融合タンパク質により、完全選択的に、病原性自己抗体を中和し、かつ病原性B細胞・形質細胞を障害し、正常免疫系を全く抑制しない革新的治療法の開発を目的として本研究を行った。その端緒として、血清中抗アクアポリン4(AQP4)抗体が病因と証明された視神経脊髄炎スペクトラム障害において、AQP4細胞外領域-Fc融合タンパク質を投与することにより、抗AQP4抗体の中和と抗AQP4抗体産生B細胞に対する抗体介在性細胞傷害により、視神経脊髄炎を改善させることができ、かつ正常免疫を抑制しないという作業仮説を証明するため以下の検討を行った。このために、AQP4の細胞外領域とIgG1 Fc領域の融合タンパク質(AQP4loopX-Fc)を作製した。方法としてはまずAQP4の細胞外領域をデータベースにて検索し、複数の検索結果を基にAQP4 loop A,C,Eの細胞外領域をGGTEKPLPVDM、VGGLGVTMVHGN、NWENHとすることに決定した。これにアンカー領域を加え、アミノ酸配列を塩基配列に変換し、これをIRESベクターに組み込むことに成功した。さらにこれをHEK細胞に遺伝子導入することに成功した。この間に、視神経脊髄炎スペクトラム障害に関する臨床的検討を並行して行い、複数の論文を発表した。
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