研究実績の概要 |
OAS1-RNAseL系の理解、そして操作の可能性に向け、A549細胞、THP-1細胞、コウモリ由来細胞(TB1Lu)等を用いて基礎的データを収集することを目的として研究を行った。。まず、OAS1の発現調節機構の検討の前に、各細胞の特性を検証した。OAS1アイソフォーム、OAS2、OAS3の発現を検討したところ、予想に反し、TB1LuではOAS3のみが発現していた。さらにA549、THP-1にてOAS1, OAS2, OAS3をそれぞれKOし、Poly-ICあるいは WNVで刺激し、高感度RNA degradation解析を行ったところ、OAS1、OAS2 KOではRNA分解に影響がなかった。A549ではOAS3 KOでのみRNaseL活性が低下し、THP-1細胞ではOAS3 KOでのみRNaseL活性が消失した。これらは各細胞株でOAS3が主たるRNaseL inducerであることを示唆する。以上の結果を得て、OAS1発現調節解析をペンディングとしたが、今までに注目されなかったOAS3の生体防御への関与を示唆する重要な所見を得た。 さらに、私たちが報告したOAS1異常症の解析では、RNaseL阻害薬であるクルクミンによる単球系細胞死の阻害を示している。より直接的に、RNaseL活性亢進の細胞死への関与を検討するため、野生型、L198V、C109Y iPS細胞で、RNaseLをKOした。これらのiPS細胞では複数以上のクローンをとることができ、単球系への分化実験にまで進んだ。 OAS1、2,3で更に機能の違いを検討する余地があることが判明し、またTB1LuではOAS3の発現が優位であることから、OAS3の機能について、特にその初期抗ウイルス応答における機能について検討する必要性が示唆された。
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