核内タンパク質であるTDP-43が細胞質内封入体を形成するTDP-43プロテイノパチーは多様な疾患群で認められるが、これら疾患は全て加齢の関与が強く疑われている。本研究は、人為的なDNA損傷誘導性の細胞老化細胞において見出されたTDP-43封入体の形成機構を明らかとすることによって、細胞老化に起因するTDP-43プロテイノパチーの分子機構に迫ることを目的とする。 昨年度までに、TDP-43封入体を効率よく誘導する細胞老化誘導法として、放射線照射法を見出した。そして、このモデルを用いて、TDP-43細胞質封入体が核外に漏出した2本鎖 DNAと高頻度に共局在していることが見出された。この共局在細胞質2本鎖の特徴を見出すために、TDP-43封入体形成細胞をレーザーマイクロダイセクションによって単離し、配列決定を試みた結果、クローンの取得率が著しく低く、また得られた場合においても、取得配列がヒトゲノム配列にunmatchedな配列が多く含まれており、また、ヒト配列にmatchしたクローンにおいても、特定の再現性の得られる配列は取得されない一方で、ヒト配列にmatchしたクローンにおいてcentromereやtelomere領域の頻度が高かった点は注目に値する結果であった。 本年度は、細胞質2本鎖DNA核酸をクローニングを行うため、放射線照射後の細胞より、核・細胞質など細胞内器官を分画後、細胞質可溶性分画の取得を行った。調製した細胞質可溶性分画より2本鎖DNAの生成を行い、平滑末端化後、Zero Bluntクローニングキットによるクローニングを行い、取得されたクローンの配列決定を行った。その結果、レーザーマイクロダイセクションの場合と同様に、centromereやtelomere由来と想定される反復配列を含むDNAがクローニングされた。
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