多数の癌患者の核酸試料を用いたゲノム解析等のオミックス解析により、数多くの癌関連遺伝子の構造的、機能的多様性に基づく発癌・進展機構が明らかにされつつあるが、一方で、その機能検証に必要となる遺伝子変化の蓄積の生物学的影響を正確にヒト細胞で再現できるアッセイ系は確立されていない。大規模癌ゲノム解析やゲノム医療等において同定される遺伝子変化等の高速機能評価が可能になればゲノム情報の質的診断法の開発基盤となることが期待される。そこで、癌の発生や進展に関わる遺伝子変化をアッセイ構築モデルとして、(1)複数の遺伝子変化の体系的機能解析に利用可能な迅速遺伝子導入技術と機能検証アッセイの確立と(2)遺伝子変化の数的・質的変化等のゲノム情報の高速機能評価に基づいた癌のリスク診断法とプレシジョン医療の開発基盤の構築等に向けた基盤的な解析を行った。令和3年度は、第1段階では解析基盤の整備として、癌関連遺伝子を分子モデルとした各種の遺伝子制御技術により遺伝子機能をヒト細胞株内で増減するアッセイの検討を行い、並行して、遺伝子変化の高速機能評価に基づいた生物学的診断と創薬スクリーニングに応用可能なcell-based assay(細胞悪性形質転換検出系、Bio-imaging系等)を検討した。第2段階では遺伝子制御アッセイの最適化に向けて、癌関連遺伝子の機能を制御した細胞を迅速に作成するアッセイの検討を行った。
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