研究課題
アルツハイマー病(AD: Alzheimer disease)では剖検脳の解析に基づいて、「神経変性は嗅内野など側頭葉皮質から始まり、マイネルト基底核のコリン作動性神経に変性が進展することで記憶障害を発症する」いう考えが有力視されてきた。しかし、生前の認知機能が正常とされた高齢者の剖検脳の解析でマイネルト基底核の変性が指摘され、「変性はマイネルト基底核から始まり、この変性だけでは記憶障害は発症しない」という対立する考えも提案されている。この論争に決着がつかないのは、剖検脳の解析に基づくために症候との対応が容易でないためである。本研究では、脳アミロイドβ(Aβ)陰性の健常高齢者、記憶は保たれるがAβ陽性のAD高リスク被験者を対象として、Magnetic resonance imaging (MRI)を用いて、マイネルト基底核と側頭葉皮質の超高感度・高解像度撮像と症候評価を行った。その結果、マイネルト基底核と側頭葉皮質の変性は強く相関しており、両者を分離することは困難であった。さらに、媒介分析を適用することで、マイネルト基底核の変性が、側頭葉皮質の変性を介して、言語性記憶の発症に関与することを示唆する結果を得た。以上の結果は、神経変性が側頭葉皮質とマイネルト基底核の両者に進展することで記憶障害を発症するという仮説が支持すると考えられた。我々の結果は、マイネルト基底核の変性だけでは記憶障害は発症しないとする仮説も支持している。Aβを除去する根本的治療では、Aβ陽性であるが、側頭葉皮質とマイネルト基底核の変性がまだ生じていない患者を適切に診断することが重要になることが示唆された。
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