研究課題/領域番号 |
21K19450
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
樋口 隆弘 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30739850)
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研究分担者 |
大島 康宏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員 (00588676)
能勢 直子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80642404)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | RI内照射療法 / 病的線維化 / 線維芽細胞活性化タンパク質 / FAPI / セラノスティクス |
研究実績の概要 |
病的線維化は細胞外マトリックスが過剰沈着し、正常組織を破壊して重篤な臓器の機能不全をもたらす進行性かつ不可逆性の難治性病態である。病的線維化において、持続的に活性化された筋線維芽細胞は細胞外マトリックスリモデリングの他、液性因子分泌による上皮細胞の増殖・分化、炎症反応にも関わる等、組織線維化に決定的な役割を果たす。ラジオアイソトープ(RI)内照射療法は、γ線放出RI標識薬を用いた画像診断を行い、患者毎に標的への集積性や線量分布を検証した後、α線若しくはβ線放出RI標識薬によって標的特異的治療を行う。この診断と治療を併せたセラノスティクスにより、副作用が少なくQOLの高いがん治療が既に臨床現場で実証されている。 そこで、申請者らは進行性の組織線維症に対する新しい診断治療戦略を切り開くことを目的とし、筋線維芽細胞に特徴的な細胞表面マーカーである線維芽細胞活性化タンパク質(Fibroblast Activation Protein: FAP)と強固に結合する放射性ハロゲン(18F、123/131I、211At)標識FAP inhibitor (FAPI)を開発することとした。 令和4年度は、昨年度に合成が完了した18F標識用FAPI前駆体および123/131I及び211At標識用FAPI前駆体を利用して18Fおよび123/131I、211Atするための標識法と条件検討を行った。また、組織線維症実験動物モデルとして、ブレオマイシンによる肺線維化モデルの作成条件検討を進め、樹立した。作製した肺線維化モデル動物の肺においては炎症、間質の肥大化、コラーゲン・エラスチン等のECM発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FAP発現陽性及び陰性細胞を利用して、in vitroで125I-FAPIの標的結合活性を検討した結果、FAPに対する結合が認められることを確認した。また、線維症モデルマウスとして、肝硬変モデルと肺線維症モデルの作成条件検討を進め、樹立に成功した。作製したモデル動物について、組織染色およびWestern Blottingを行い、目的組織の線維化を確認した。 共同研究者間での研究進捗、課題点を随時共有できるよう、Webミーティングを活用した情報収集・進捗報告を定期的に行っている。
以上の通り、令和4年度までに完了目標としていた標識前駆体合成の完了、放射性ハロゲン標識体の1つである125I-FAPIの標識、in vitroでのFAPI結合活性評価、線維症モデル作製が完了できたことから、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
サイクロトロンで製造した211Atを用いて211At-FAPIの標識合成を進め、安定かつ高効率で標識可能なプロトコールを確立する。こうして得られた放射性ハロゲン標識FAPIについては、血漿中で培養し安定性を調べる。 また、組み換えFAPタンパク質や細胞株を用いて、in vitroにて放射性ハロゲン標識FAPIの結合活性を検討する。更に、FAP発現細胞に対する細胞結合活性及び殺細胞効果の検討を行う。 in vivo評価については、今年度に完成した実験動物モデル系である肝硬変モデルマウス、肺線維症モデルマウスから取り出した肝臓中のFAP発現について評価する。今年度樹立した動物実験モデルを用いて、各放射性ハロゲン標識FAPIを線維症モデル動物に投与して体内動態と標的集積性を検証すると同時に、化合物間の違いも比較検討する。更に小動物用イメージング装置を用いて18F及び123I-FAPI線維化組織イメージングを行う。更に、131I及び211At-FAPIによる線維症の治療実験を行い、病変改善効果を調べる。
本研究課題において、放射性同位元素(RI)を利用した線維化診断及び内照射療法の可能性を検討することにより、進行性の組織線維症に対する新しい治療戦略として診断~治療までの医療全体に大きく貢献する技術となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症予防の観点より、WEB会議による研究打合せが主体となり、予定していた出張が無くなり、旅費が概ね不要となった。加えて、施設内の装置運用スケジュールにより今年度予定していたサイクロトロンでのハロゲン作成を来年度に実施する運びになったことから、残額が生じた。
(使用計画)本研究の達成に向け、今年度に実施できなかった実験・物品は次年度に納品・実験予定であるため、申請通りの当該目的費用として使用する予定である。 令和5年度以降は放射性ハロゲン標識FAPI合成試薬の他、細胞結合実験、殺細胞効果を検証するための試薬を購入予定である。また、In vivo評価実施にあたり、実験動物の他、サイクロトロンでの放射性ハロゲンの製造のために必要な物品購入と施設利用料がかかる見込みであり、当初予定通りに使用予定である。
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