研究課題/領域番号 |
21K19451
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
副島 英伸 佐賀大学, 医学部, 教授 (30304885)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | インプリンティング制御領域 / DNAメチル化バウンダリー / SOX2/OCT4 / CTCF |
研究実績の概要 |
マウスICR1をモデルとして、DNAメチル化の伸展をブロックする境界領域(DNAme boundary)の特徴を明らかにし、DNAメチル化伸展の分子機構を解明することを目的とした。マウスICR1には、SOX2/OCT4結合部位(SOBS)と4ヶ所のCTCF結合部位(CTS1-4)が存在する。SOBS変異(mSO)に加えて一ヶ所のCTS変異、あるいは二ヶ所以上のCTS変異を組み合わせた変異マウスパネル(mSOCマウスパネル)の作製を試みた。これまでに樹立したmSOに加えて、mSOC+CTS3(mSOC3)、mSOC+CTS4(mSOC4)、ΔCTS3、ΔCTS4の系統を樹立した。このうち、mSOC3/+ではICR1全域の高メチル化を認めた。mSOC4/+もICR1の高メチル化を認めたが、CTS3周辺はメチル化されなかった。ΔCTS3とΔCTS4は、それぞれのCTS周辺領域が高メチル化されたものの、ICR1全域のメチル化は認めなかった。また、mSOC3/+は、有意な体重増加を認め、肝臓、腎臓、舌の各組織においてIGF2の両アレル発現による発現量増加とH19の発現減少を認めた。以上の結果から、表現型を伴うICR1の異常高メチル化には、少なくともSOBSとCTS3の二ヶ所の変異が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SOBSとCTSの分子的相互関係を解明するため、mSOC変異マウスパネルの作製を優先的に行った。すでに、mSO、mSOC3、mSOC4、ΔCTS3、ΔCTS4の合計5系統を樹立した。また、mSOC2も素手の生まれており、樹立までわずかである。さらに、mSOC1、ΔCTS3+ΔCTS4、ΔCTS1、ΔCTS2の作製に取りかかっている。また、mSOC3とmSOC4の全ゲノムメチル化解析(EM-seq)のデータは取得済みで、CTCFおよびRAD51に対するChIP-seqの準備も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.mSOC変異マウスパネルの完成と解析:mSOC1、ΔCTS3+ΔCTS4、ΔCTS1、ΔCTS2の系統を樹立する。各系統の表現型(新生仔体重、各臓器の腫大の有無など)、ICR1と周辺のDNAメチル化、IGF2とH19の遺伝子発現の解析を行う。 2.mSOC3とmSOC4のエピゲノム解析: ChIP-seqを行う。また、chromatin conformation capture(3C)法による解析も行う。EM-seqに加えてこれらのデータを統合することでSOBSとCTSの分子的相互関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種試薬の節約、効率的な使用方法により出費を抑えることができた。また、講座費等で一部分を賄った。 次年度は、マウス系統作製および飼育費用、DNAメチル化解析費用、遺伝子発現解析費用、ChIP-se解析に必要な消耗品に研究費を充てる。その他、成果発表のための旅費、英文校正費等に使用する予定である。
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