研究課題/領域番号 |
21K19453
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
畠山 淳 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (90404350)
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研究分担者 |
土屋 英明 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 技術専門職員 (10378440)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 霊長類 / 脳発生 / グリア細胞 / 脳脊髄液 / 早産児 |
研究実績の概要 |
日本の出産における早産児の割合は約6%、低出生体重児は約10%も占める。早産児・低出生体重児では、グリア細胞数の減少や白質容量の低下、神経の髄鞘化が遅れる傾向にあり、将来的に発達障害の発症リスクが高い。現在は、栄養学的観点からのケアが中心だが、分子機構を根拠にした処置が加われば、予後の大きな改善が期待できる。本研究では、早産児、低出生体重児の脳発達の予後改善を目指し、霊長類の脳発生研究の基盤創出と分子レベルの理解に取り組む。 1)霊長類の妊娠中期・後期の脳発達現象の組織学的解析、2)outer radial glia細胞(oRG細胞)の維持・増殖及びグリア細胞増産に寄与する因子の探索、3)非ヒト霊長類での早産児モデルの立ち上げと、早産で影響を受ける脳脊髄液因子の探索、4)実験計画2と3の候補因子の機能解析、以上を計画している。2021年度は、カニクイザル妊娠中期・後期の脳の組織学的解析を行い、霊長類の脳研究の基礎を構築する事に努めた。種々の細胞マーカーで解析とMRI撮影(DWI画像、DTI画像)により、白質や神経髄鞘化の発達過程の全体像立体Mapの作製を進めている。次に、神経発生後期に増大するoRG細胞の維持・増殖およびグリア細胞増産に関与する因子を探索するため、カニクイザル胚の脳を用いて、slide RNA-seq解析を行った。二次解析を行なっており、velocity解析から、白質を形成するグリア細胞の元になる神経幹細胞集団の同定と、そのクラスターの遺伝子発現特徴から、神経幹細胞の維持・増殖に関わる因子を選定しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、カニクイザル妊娠中期・後期の脳の組織学的解析を行い、霊長類の脳発生研究の基礎を構築する事に努めた。種々の細胞マーカーで解析とMRI撮影(DWI画像、DTI画像)により、白質や神経髄鞘化の発達過程の全体像立体Mapの作製を進めている。次に、神経発生後期に増大するouter radial glia細胞(oRG細胞)の維持・増殖およびグリア細胞増産に関与する因子を探索するため、カニクイザル胚の脳を用いて、slide RNA-seq解析を行った。現在、二次解析中で、探索条件を満たすような因子が見つかりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
基本は、予定通りに進める。oRG細胞の維持・増殖及びグリア細胞増産に関与する因子について、すでに実施しているslide RNA-seq解析から候補になるものを選定する。そして、oRG細胞の初代培養を用いて、その因子の機能解析実験を行う。有力な候補因子に関しては、グリア細胞の増加や白質の発達の評価に有用なモルモット胚の脳を用いて機能解析を生体内で行う。さらに、早産児モデルの立つ上げについて準備を整え、実施する。また、昨年度に引き続き、霊長類の脳発生研究の基盤のための組織学的解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ流行の影響で、分担者の方で購入予定であったサルが入手できない状況にあったため、R4年度に、調整して購入する予定である。その分の経費として約120万円繰り越している。本助成金で、サル胚を得るための胚移植をする仮親になるメスのサルを購入する。
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