研究課題/領域番号 |
21K19454
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
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研究分担者 |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (20082282)
大山 陽子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20583470)
東 貞行 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (20866701)
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30646758)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 血小板 |
研究実績の概要 |
動脈硬化の病態は、軽微な慢性炎症による血管内皮細胞障害で開始される。その後、通常であれば収束する炎症機構が破綻することで、炎症が遷延して動脈硬化は進展悪化する。この過程には血管内皮細胞に加えて、多くの血球系細胞が関与しているが、この研究では血小板の動脈硬化に対する役割についてフォーカスを当てて、2年間の計画を立てた。 血小板は止血反応に重要な因子であるが、近年がんの進展や免疫反応への関与が報告され、新しい血小板の機能が示唆されている。この計画では、血小板が持つ2つの作用―炎症を増悪する作用と炎症を抑制する作用―について関与する血小板内シグナルの解明を目的にしている。 本年度は、mTORシグナルが血小板の形質にどのようにかかわるかを明らかにするために、巨核球系細胞株の Meg01を使用して研究を行った。Meg01は各種サイトカインの刺激に対して、血小板内のシグナルと類似した反応を呈する。血小板の活性化に関係するシグナル分子に注目して、その活性化とシグナルの亢進、抑制について検討した。また、それらが、時間による変動の影響を受けないか、また代謝系の制御を受けないか、検討中である。 血小板は多くの顆粒をもち、内在する生理分子を適宜放出する。血小板の活性化、顆粒内容物の放出が適切に行われていることが生体の恒常性の維持に繋がっていると考えられるため、本研究で血小板の異常事態ー機能制御の破綻の機序を解明できると、動脈硬化のみならず、多くの疾患の新たな制御機構を解き開かすヒントとなると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、巨核球系細胞株の Meg01を使用して、mTORシグナルが血小板の形質に及ぼす影響についての研究を予定し、ある程度遂行することができた。特に、血小板の活性化に関係するシグナル分子CALDAG-GEFIがMeg01にも発現し、刺激によりシグナルの亢進が見られた。また、ヒト多血小板血漿 (PRP) を調整し、このヒト血小板を使用して同様の結果が得られた。代謝系の検討まで行うつもりであったが、新型コロナ感染症に伴う業務の増加などの影響で、達成できなかったものの、70%程度の目標は到達できたため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は2か年計画の最終年度である。一定の方向性を持たせるために、当初の計画にもりこんでいるように、分子をノックダウンした培養巨核球計細胞株Meg01を適宜刺激して gene profiling 解析を行う。このマイクロアレイで得られたデータにより、転写因子群で発現の変化する分子一群を同定し、血小板内におけるその役割、シグナルなどを検討する。その際に、初年度に行った一連のシグナル関連の予備実験を参考にして、出来るだけスムーズな進展を試みる。以上の研究が大成すれば、血小板内代謝系を標的とした新たな動脈硬化の制御機構解明も期待され、基礎研究の発展にも寄与するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症業務等で、支出金額の大きいマイクロアレイによる網羅解析が次年度に繰り越された。従って繰り越した分の使用目的は明確であり、早急に計画されているマイクロアレイを行う予定になっている。
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