研究課題
一般的に、動脈硬化の本質は軽微な慢性炎症による血管内皮細胞障害と捉えられている。この血管炎症が収束せず遷延することで、動脈硬化は進展増悪する。この過程には多くの血球系細胞も関与しているが、血小板の動脈硬化に対する役割に対する新たな知見を得ることが本研究である。血小板は止血反応(一次止血)に重要であるが、血小板の2つの作用として、炎症に関与する血小板内シグナルを検討して一定の成果を得た。1.VEGF-Aアイソフォームの測定系の確立と血小板VEGF-Aの測定:VEGF-Aは血管内皮細胞に働いて血管新生や炎症などに関わる分子であるが、このスプライシングバリアントであるVEGF-A121とVEGF-A165を正確に測り分けるELISAを開発した。血清中ではVEGF-121が有意に高値であるが、血小板内ではVEGF-165が高値を示していた。また、VEGF-A121とVEGF-A165の血小板からの分泌量が異なることを基礎研究で明らかにした。2.血小板の炎症制御機構の検討:主に巨核球系培養細胞Meg01を使用して研究を遂行した。Meg01の細胞内シグナルを検討し、血小板の活性化(膜糖蛋白IIb/IIIaの活性化)に直接関係するCALDAG-GEFI分子のMeg01での発現と、カルシウム刺激などのRap1活性化に重要であることを確認できた。また、Meg01において時計遺伝子の一つBMAL1がVEGF-Aの発現に影響を与える可能性を明らかにした。代謝制御シグナル系であるmTORの制御によるVEGF-Aの変化、血小板機能への影響なども検討したが、一定の結果を得るために今後もさらに検討を重ねていく。本研究を進めて、代謝、時間に関わる分子と血小板による炎症の連関が明らかになると、血小板内代謝系を標的とした新たな動脈硬化の制御機構解明も期待され、基礎研究の発展に寄与すると確信する。
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Frontiers in Neurology
巻: 14 ページ: 01-07
10.3389/fneur.2023.1137958
PLOS ONE
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