研究課題/領域番号 |
21K19455
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岩田 洋 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00451807)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 冠動脈疾患 / 心房細動 / 大動脈弁狭窄症 / CHIP / micro RNA / non-coding RNA / 老化 |
研究実績の概要 |
対象は、動脈硬化性の冠動脈疾患に対して血管内治療を施行された症例・心房細動に対してカテーテルアブレーションを施行された症例・大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を施行された症例とし、治療手技の直前に血清と血球をサンプリングする。血清のエクソソーム内からRNAを単離し、micro RNA(miRNA)、non-coding RNA(ncRNA)を同定する。加齢関連因子として、血清中のテロメラーゼ活性とp53レベル、さらに血球成分DNAにおけるテロメア長を定量化し、さらに全エクソーム解析を行ってTET2・JAK2・DNMT3A遺伝子のエクソン領域変異を評価し、骨髄細胞における後天的な体細胞遺伝子変異: Clonal Hematopoiesis of Indeterminate Potential (CHIP)の有無を評価する。その上で、3疾患に共通して発現しているエクソソーム miRNA・ncRNAのうち、測定された老化関連因子の多寡、CHIPの有無で層別化して、明らかな差を持つものを選び出し、さらに心血管死亡のあり・なし群で有意差を認めるものを同定できれば、加齢・老化メカニズムにより進行する3疾患共通の予後関連miRNA/ncRNAを見出すことが可能である。スクリーニングで同定されたmiRNAまたはncRNAを、マクロファージと線維芽細胞で過剰発現またはノックダウンして変化する、対象遺伝子やpathwayをin vitroでさらにスクリーニングし、本研究計画で見出したmiRNAやncRNAを標的とした薬剤など、具体的な介入方法を見出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度は倫理委員会による承認を得て、冠動脈疾患(PCI)、心房細動(アブレーション)、大動脈弁狭窄症(TAVI)症例の術前採血を行って血球、血清をサンプリングし、保存している。同時に血球(単核球分画)からゲノムを抽出し、CHIPの有無を評価、miRNA/ncRNAの単離とその発現、テロメラーゼ活性とp53レベルなどの方法を確立し、データを保存しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
一定数(各病態20症例程度)症例数が得られたところで、疾患ごとあるいは共通に発現しているmiRNA/ncRNA、CHIPの有無についての検討を開始する予定である。本研究はこれまで臨床上まったく異なる疾患と考えられてきた、冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化・最も頻度が高く心不全や脳塞栓の原因となる心房細動・さらに心不全や突然死の原因となる大動脈弁狭窄症の進行メカニズムを、横断的に解析することを特徴とし、その機能が次第に明らかにされ、悪性腫瘍を含む多くの病態に関連することが示されつつあるが、特に心血管疾患ではほとんどその機能が解明されていないエクソソーム内のmiRNAやncRNAをスクリーニングすることに意義がある。さらに、CHIPを含む加齢・老化関連因子との関係を中心として評価することで循環器疾患における老化の関与の程度、が評価できる可能性がある。本罹患率も致死率も高く、社会的に重要な心血管疾患のメカニズム解明に大きなパラダイムシフト、あるいはそれらの治療方法開発のブレイクスルーとなりうる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は倫理委員会申請、血清・血球サンプル・データ収集と方法論の検討を行っており、今年度以降にゲノムからCHIP、エクソソームmiRNA/ncRNAの発現を解析して3疾患共通のメカニズム探索を行い、さらに血清における老化マーカー発現の解析を行うため。
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