研究課題/領域番号 |
21K19458
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山中 智行 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (00381575)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | タンパク質凝集体 / 神経変性疾患 / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
異常タンパク質の凝集・蓄積は、多くの神経変性疾患に見られる共通の病態であり、神経の機能障害や細胞脱落に深く関わっている。これまで、これら毒性のある凝集体を消失させることが主な治療戦略であったが、現在は発症前の予防的な措置が重要と指摘されている。しかし、凝集の時期を正確に予見し予防薬を投与し続けることは現時点では難しい。さらに、最近、タンパク質凝集体がプリオンのストレインのように異なる病態を伝播することも見いだされ、疾患の治療・予防法の確立をより困難にしている。本研究では、発想を180度転換し、毒性のない良性の凝集体(ストレイン)を作製し、これを用いて凝集体の毒性化を競合的に阻害し神経変性を抑制するという、全く新しい治療戦略の確立に挑戦する。本年度は、αシヌクレインの変異体タンパク質ライブラリーを構築し、その変異を網羅的プロテオミクスにより同定する実験系を確立することにより、凝集に影響する変異部位を複数同定することに成功し、第44回日本分子生物学会年会のワークショプで報告した。また、プロテオミクスを用いた解析から、αシヌクレインなどの低複雑性タンパク質が脳内で熱耐性画分に濃縮すること(Park H, Yamanaka T et al. Sci Rep. 2022)、さらにアミノ酸分析と組み合わせることにより、neuronal intranuclear inclusion diseaseの脳内で蓄積する新規タンパク質Hornerinを同定した(Park H, Yamanaka T et al. Acta Neuropathol Commun. 2022)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
αシヌクレイン変異体のタンパク質ライブラリーの構築とその質量分析による同定の実験系は確立することができた。凝集を促進・抑制するような変異も得られつつあり、本研究の第一段階はクリアしつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
凝集活性が減少する変異体について、これが存在することで野生型αシヌクレインの凝集においても抑制的に働くかをまず検証する。さらに、αシヌクレイン凝集体の伝播や毒性においても抑制効果があるかを調べ、良性ストレインとして機能するかを調べていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はαシヌクレインの変異体ライブラリの作製といったin vitroの研究のみをおこなっており、神経細胞やマウスを用いた凝集体の伝播や毒性評価といった多額の費用がかかる研究を次年度に回すことになった。次年度はこれら実験系を用いて良性ストレインが存在するかを検証していく。
|