研究課題
異常タンパク質の凝集・蓄積は、多くの神経変性疾患に見られる共通の病態であり、神経の機能障害や細胞脱落に深く関わっている。これまで、これら毒性のある凝集体を消失させることが主な治療戦略であったが、現在は発症前の予防的な措置が重要と指摘されている。しかし、凝集の時期を正確に予見し予防薬を投与し続けることは現時点では難しい。さらに、最近、タンパク質凝集体がプリオンのストレインのように異なる病態を伝播することも見いだされ、疾患の治療・予防法の確立をより困難にしている。本研究では、発想を180度転換し、毒性のない良性の凝集体(ストレイン)を作製し、これを用いて凝集体の毒性化を競合的に阻害し神経変性を抑制するという、全く新しい治療戦略の確立に挑戦する。これまでに、αシヌクレインの変異体タンパク質ライブラリーを作成し、凝集反応後に遠心分画しプロテオミクスを行うことにより、凝集・不溶化に関わるアミノ酸変異を新たに同定してきた。今年度は、αシヌクレインの家族性変異体についても同様にライブラリーを作成し、同様の解析を行ったところ、不溶化を促進・抑制するアミノ酸変異に多くの共通性が見られ、凝集・不溶化を本質的に制御するアミノ酸が同定されつつある。これとは別に、条件検討によりチオフラビン蛍光の弱い凝集体を調製することに成功した。これを凝集過程で少量加えることで、チオフラビン蛍光の上昇を抑制されることも見出し、競合的な凝集制御を行っていると考えられ、現在論文化に向けた最終データを収集中である。別に、パーキンソン病の動物モデルについてまとめ、総説を発表した(Yamanaka T, Matsui H, Dev Growth Differ. 2023)。
3: やや遅れている
αシヌクレインの野生型や家族性変異体について、変異体タンパク質ライブラリーの作製と網羅的解析により、凝集・不溶化を本質的に制御するアミノ酸を同定しつつある。これとは別に、チオフラビン蛍光の弱い凝集体の調製に成功し、これが凝集過程でのチオフラビン蛍光の上昇を抑制することも見出し、競合的に凝集を制御するストレインの可能性が示唆されている。ただ、細胞・動物を用いた実験の条件検討に時間がかかっており、そのため次年度での実験が必要となった。
凝集・不溶化を本質的に制御するアミノ酸に変異を導入することで、凝集を競合的に抑制するストレインを構築できるか検討する。さらにこれらを細胞やマウス脳に導入することで、αシヌクレインの伝播・神経毒性が抑制されるかを検討する。チオフラビン蛍光の弱い凝集体についても同実験系にてその有用性を検討する。
in vitroでの結果をvalidationするための細胞、マウスでの伝播や毒性実験に多額の費用がかかるが、これらを次年度に回すことになったため次年度使用額が生じた。次年度はこれら実験系により良性ストレインが存在するかを明らかとする。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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