研究課題/領域番号 |
21K19468
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
小川 優子 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (00454497)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 血管再生医療 / 末梢血白血球細胞 / 造血幹細胞 / X線照射 |
研究実績の概要 |
我々は造血幹細胞の血管再生メカニズムが、ギャップ結合を介し、造血幹細胞が障害された血管内皮細胞に対してグルコースやアミノ酸等の低分子エネルギー基質を供与し、障害された血管内皮細胞のエネルギー代謝を活性化することを明らかにした (Taura et al., stroke, 2020)。本研究は、ヒト末梢血白血球細胞に造血幹細胞と同レベルのエネルギーを付与し、外部へのエネルギー放出が可能な状況を作ることにより、造血幹細胞と同様の働きを有する末梢血白血球製剤の開発を目指すものである。 2年目の今年度は、ヒト臍帯血の単核球画分にエネルギー源となり得る物質を添加し、細胞のエネルギー状態を上昇させることを試みた。その結果、一部の物質では単核球画分のエネルギー源を上昇させる傾向が認められたが、あくまで微増レベルであり、顕著な増加には繋がる物質は得られなかった。また、造血幹細胞において機能を向上させる方法である、細胞を一度低エネルギー状態に暴露させた後に高エネルギー状態へとシフトさせる方法を実施した。低エネルギー状態下の時間については、18時間以上が必要である。個体毎に異なるものの、24時間の低エネルギー状態下では8割以上が死細胞となり、一部生存した細胞については血管再生能を促進する傾向が見られたものの、細胞の有効性を謳うのは難しいと判断されたことから、低エネルギー状態下での反応を一旦中断することとした。 そこで、末梢血中の造血幹細胞に着目した。成人の末梢血からCD34陽性細胞を分離し、臍帯血中のCD34陽性細胞と比較したところ、エネルギー状態およびグルコースやアミノ酸濃度、いずれも臍帯血中の造血幹細胞と比較して低い傾向を示したが、造血幹細胞としての働きを十分に示すエネルギー状態であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臍帯血単核球画分を用いた機能向上の到達が当初の予定よりかなり遅れている。そのため、末梢血白血球画分のうち造血幹細胞に着目した研究に切り替えることとした。
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今後の研究の推進方策 |
献血製剤のうち、白血球画分は最初の段階でフィルター除去され廃棄される。末梢血中の造血幹細胞はこのフィルターでトラップされており、この細胞をレスキューすることで造血幹細胞を容易に得ることが出来る。 我々は、臍帯血に15Gyの放射線照射を行うことで、GVHDおよび投与細胞の癌化を抑制した他家移植可能な造血幹細胞製剤を開発している。放射線照射を行うことで幹細胞としての増殖能は抑制されるが、その後も脳梗塞に対する治療効果は失われない。すなわち、献血製剤由来の血液製剤から造血幹細胞のみを分離し、放射線照射を行うことでも同じ結果が得られる可能性が高い。そこで今年度は、成人末梢血単核球画分からCD34陽性細胞を分離し、治療メカニズムに必要なマーカー発現の検証、in vitro試験を用いた血管再生促進能の評価、脳梗塞モデルマウスに投与した際の治療効果の検証を行う。
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