肝線維化に対する根本的な治療法は確立しておらず、肝線維化を直接抑制する薬剤の開発が強く望まれている。肝線維化時に肝星細胞は、炎症性サイトカインによって活性化しI型コラーゲンを大量に分泌する。これが線維化の主な要因となる。これまでに研究代表者は、肝星細胞の分泌経路の変化に着目し、分泌経路関連因子の発現抑制によって、肝線維化を抑制できる可能性を見出した。すなわち、炎症性サイトカインによって刺激を受けた肝星細胞が、転写因子CREB3L2依存的に、小胞の被覆因子として機能するSec23A/Sec24Dを特異的に発現上昇させることを見出し、コラーゲンとは異なる未同定の肝線維化責任因子が小胞体からゴルジ体へと輸送されることで、初期の肝星細胞活性化に関与する可能性を明らかにした。 本研究において代表者は、分泌経路関連因子を含む複数種の標的に対するsiRNAを組み合わせた新規siRNA治療法の可能性を検討することで、線維化抑制効果の増強を目指すことを目標とした。 これまでの挑戦的研究ではHFDによる肝線維化モデルマウスを作成し、siRNAオリゴによる発現抑制を検討した。本年度代表者は、AAVウイルスを用いたshRNAによる発現抑制系を新たに構築することを考えた。本システムを用いることで、さまざまなshRNAを組み合わせた複数種の標的に対する発現抑制を効率的に検証することが可能となる。shRNAを2種同時に発現できるコンストラクトを作成し、AAVウイルスによる発現抑制を現在検討中である。
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