研究課題
わが国では高齢化に伴い心不全患者の増加が社会問題となっている。最近の研究により左室駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction;HFpEF)が増加傾向にあり、心不全の約半数を占めることが明らかにされた(Pfeffer et al., CircRes 2019)。HFpEFでは左室収縮能が保持されているが拡張能が障害されており、高齢者に多く、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの合併が多い。病理組織学的には心筋肥大、線維化、慢性炎症や血管内皮障害がみられ、様々な細胞が病態形成に関与する。治療としては、一般的な心不全薬であるベータ遮断薬やレニンアンギオテンシン系阻害薬などは無効であり、現在予後を改善できる根治的治療法はなく、新しい治療の開発が真に求められている。そこで本研究ではHFpEFモデルマウスに対して心筋リプログラミングの有効性を検証する。さらにシングルセル解析を用いてHFpEFの病態や心筋リプログラミングの作用機序を解明し、心筋リプログラミングによる新しいHFpEF治療の確立を目指す。本年度は遺伝子改変マウスの全心臓細胞に対してSingle cell RNA-seqやATAC-seqを行った。これまでの実験で、マウス心臓細胞のシングルセル解析技術を構築し、線維芽細胞、血球系細胞、血管内皮細胞など各細胞群の同定に成功した。さらにATAC-seqでは心筋リプログラミングによる線維芽細胞のエピジェネティック変化を見出した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り遺伝子改変マウスの全心臓細胞に対してSingle cell RNA-seqやATAC-seqを行った。
さらに新しい治療開発のため遺伝子ベクター開発を行う。
Single cell RNA-seqで解析検体数が不十分であり次年度使用額が生じた。次年度は心臓細胞の解析検体数を増やしてSingle cell RNA-seq解析を行う。
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