全身性強皮症(SSc)は膠原病の一つであり、線維化(皮膚硬化、肺線維症など)、血管病変(レイノー症状、潰瘍、肺高血圧症など)、免疫異常(自己抗体産生など)を呈する自己免疫疾患と位置づけられている。重症型のSScでは10年生存率は約70%であり膠原病の中で最も予後不良である。SScでは抗topoisomerase I(topo I)抗体を始めとする自己抗体がその90%以上に陽性となる。自己抗体は発症以前から存在し、自己抗体はSScの病型、予後、疾患活動性、重症度などと密接に相関する。従って自己抗体はSScの病態形成に密に関わっているとされている。しかしSScの自己抗体には病原性はないと一般的には考えられている。その理由としては、①自己抗体が細胞膜を通過して細胞内に入るという証拠がない、②もし仮に自己抗体が細胞内に入ったとしても、topo IなどのSSc関連自己抗原は核内に存在する細胞分裂に必須の分子であり、その機能を抑制すると細胞死が誘導される、③自己抗体が細胞分裂を抑制することと線維化との関連性が全く不明であるなど、が挙げられる。しかし前述の如く自己抗体が示す高い臨床的意義を考慮すると、SScにおいて自己抗体には病原性がないとは一概には言い切れない。自己抗原のエピトープは高次構造上にあり2個以上の非連続性のポリペプチド上に分散していることである。従って交叉反応を正しく評価するために、高次構造を保った分子との反応を検討することが不可欠である。本研究の目的は、独自の技術による高次構造を維持したヒト蛋白質アレイを用いて蛋白質をSSc患者血清で網羅的にスクリーニングしSScの自己抗体と交差反応する細胞外分子、すなわち真の自己抗原を同定することである。
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